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最終更新日:2024年4月22日

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全学自由研究ゼミナール (最新の宇宙像)

最新の宇宙像
近年、宇宙観測の技術は急速に発展を遂げており、私達人類が持つ宇宙像は、大きく塗り替えられている。最先端の宇宙観測とその成果を、理学系研究科附属天文学教育研究センターに所属する様々な分野の専門家がわかりやすく紹介する。天体現象だけでなく観測手法についての解説も行う。天文学の知識を系統的に与えることが目的ではなく、多様な宇宙の姿やその観測技術・研究手法に興味を持ってもらい、科学的な思考方法に慣れてもらうことに主眼をおく。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31472
CAS-TC1200S1
全学自由研究ゼミナール (最新の宇宙像)
峰崎 岳夫
S1 S2
水曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
第1回 「ガイダンス」(峰崎) 幅広い波長域にわたる最先端の天体観測により、膨張宇宙において様々な スケールの天体が生まれ、進化している様子が明らかにされつつある。 ここでは現代天文学の基本的な考え方を説明するとともに、星、ガス雲、 銀河、銀河団など様々な種類・スケールの天体が、膨張宇宙の進化の過程で どのような位置づけにあるのかを俯瞰し、ゼミナール全体のガイダンスとする。 第2回 「星と惑星系の誕生」(小林) 星は暗黒星雲の中で冷たい星間ガスが降り積もって作られる。 そのダイナミックな過程を、最新の観測・理論データをもとに紹介する。 星の誕生と同時に、周囲を回転する原始惑星系円盤の中では、木星や地球の ような惑星が誕生・成長する。この講義の後半では、主に系外惑星系の観測と 理論シミュレーションを通して明らかになった、惑星系誕生についての 最新の知識を紹介する。 第3回 「赤外線スペクトルで見る大質量星の誕生と死」 (高橋) 大質量星は数こそ少ないが、寿命が短いため進化のサイクルが早く、 輻射及び物理的なエネルギー放出が極めて大きい。さらに、その最期である 超新星爆発に伴って、大量の金属元素を宇宙空間に放出する。これらの特質は、 恒星進化のみならず、銀河の活動性の起源、及び宇宙における元素の形成に 本質的な影響を与える。この重要な大質量星の進化について、減光が大きく 可視光での観測が困難な領域も含めて、赤外線スペクトル観測が明らかに しつつある現状及び将来の展望について紹介する。 第4回 「宇宙に漂う塵(ちり)」(宮田) 宇宙空間は全くの真空ではない。そこには気体のガスの他に、小さな固体物質 =塵が大量に漂っていることが知られている。この塵を良く調べると地球の 石に似たものやスス、複雑な有機物なども含まれていることが分かって来た。 この様な塵はどこからきたのだろうか?本講義では最新の赤外線観測などから 明らかになって来た宇宙の塵の正体に迫る。 第5回  「小中質量星の進化と質量放出」(上塚) 小中質量星はその進化の末に赤色巨星となり、恒星内部で合成した物質を 活発に宇宙へ放出する(質量放出)。この質量放出は宇宙に物質的な多様性を もたらす重要な現象の一つであるが、その一連の過程を理解するためには、 小中質量星の進化や赤色巨星の脈動、星周におけるダスト(塵)の形成など、 多岐にわたる現象を理解する必要がある。本講義では、これらの現象に関する 観測的・理論的研究の成果とその手法について解説し、小中質量星の進化と 質量放出に関する最新の描像を紹介する。 第6回 「光赤外線天文学の観測技術」(酒向) 対象が遠方に位置する天文学では、他の自然科学のように能動的な実験・ 測定による調査を行うことができない。天体が発する微かな信号(電磁波)を いかに検出し測定するかという受動的な手法を極めることになる。 CCDに代表される電子の目と高速な演算処理が可能な電子の頭脳の獲得は、 天文学に17世紀の望遠鏡の発明以来の第2のブレイクスルーをもたらした。 本講義では可視~赤外線光を用いた最新の観測技術とそれにより得られた 研究成果について紹介する。 第7回 「ぼやけた画像をくっきりと:補償光学の技術と成果」(峰崎) 多くの大型光赤外線望遠鏡が建設され非常に暗い天体の観測が可能になったが、 地上にある望遠鏡は厚い大気を通して天体を観測しているため画像がぼやけて しまい、望遠鏡が本来備える角度分解能が発揮できずにいた。これを克服した のが補償光学という技術である。ここでは補償光学技術の概要と発展について 解説し、これを応用した天文学的成果についても触れたい。 第8回 「近傍銀河の形態と力学」(江草) 銀河とひとことで言っても、その大きさや質量、形や星形成活動の活発さ などにはそれぞれ大きな違いがある。本講義では、近傍銀河の形態によって 分類された種族(楕円銀河、円盤銀河、不規則銀河など)を紹介し、 それぞれの銀河種族がどのような特徴を持っているのかについて説明する。 また、各銀河の内部構造を理解するためには、星や星間ガスの運動を知ることも 欠かせない。そこで、観測量から得られる力学的な指標と銀河の形態や 内部構造との関連性についても紹介する。さらに、銀河内の渦巻腕構造や 棒状構造が、星間ガスや星形成活動に与える影響についての最新の研究成果にも触れる。 第9回 「面分光で探る天体の詳細構造」(松林) 2次元視野の分光スペクトルを一度に取得する観測手法である面分光は、 広がった天体の詳細構造の解明に非常に有用であり、多くの大型望遠鏡に 面分光機能を備えた装置が搭載されている。本講義では、主に可視光・近赤外線での 面分光に用いられる手法と面分光観測によって得られた観測結果について解説する。 第10回 「可視光・赤外線で探る銀河の誕生と進化」(小西) 光の速度は有限であるため、遠方の天体を観測すれば宇宙の過去の姿を観測する ことが可能となる。この事実を利用すれば宇宙や銀河の進化を探ることができるが、 宇宙膨張による赤方偏移のため、宇宙初期の天体から放射された電磁波は波長が 引き伸ばされて地球に届く。化学組成や活動性など多くの情報が含まれている 可視光線を遠方の銀河から捉えるにはより波長の長い赤外線で観測する必要がある。 ここでは最近の可視・赤外観測で明らかになってきた 銀河の形成と進化についての 最新の研究成果を、その観測手法も含めて解説する。 第11回 「超大質量ブラックホール」(河野) この宇宙に存在する数多くの銀河の中心には、その質量が太陽の100万倍以上という 「超大質量ブラックホール」が存在し、しかも銀河(バルジ)の質量と、ある一定の 比を示すという驚くべき性質が明らかになってきた。また、こうした超大質量 ブラックホールが、宇宙開闢からわずか7億年足らず(宇宙年齢の5%程度)の時代に、 既に存在することもわかってきた。こうしたブラックホールがいつどのように誕生し、 銀河との関係性がなぜ存在するのか、現代天文学の大きな謎になっている。 重力波を含めた最近の観測成果をもとに、この問題を考察したい。 第12回  「活動銀河核」(鮫島) 銀河の中には中心のコンパクトな領域が非常に明るいものが存在しており、 活動銀河核と呼ばれている。その正体は超巨大ブラックホールだと考えられ、 それに付随して様々な極限的物理現象が起こっている。加えて重要なのが、 恒常的に光っている天体の中では最も明るいという特徴である。このため極めて 遠方にあっても活動銀河核の観測は可能で、過去における宇宙の様子を調べるための 貴重な手段となっている。本講義では活動銀河核観測の歴史を概観し、また それによって明らかになってきた宇宙進化の様子について紹介する。 第13回 「膨張する宇宙」(土居) 宇宙が膨張していることは1920年代より知られている。ここでは、2011年の ノーベル物理学賞の対象となった遠方の超新星を用いた膨張宇宙の測定の 様子を中心に、宇宙背景放射・銀河分布などを用いた測定方法などについても触れ、 宇宙膨張の最新の精密測定結果と、その結果提唱されるようになった謎の 暗黒エネルギーについて解説する。
授業の方法
オムニバス形式で講義を行う(全13回)。授業の各回ごとに取り上げるテーマは異なるが、ストーリーとしては完結して理解できるように配慮する。講義の順番については入れ替わる可能性があるため、第1回のときに最新のスケジュールをアナウンスする。 第1回、第10回の講義はオンライン(コールセンター方式)で、そのほかは対面形式で行う。各回の講義資料(およびオンライン形式の場合の zoom 接続先)については ITC-LMS上の本講義のページにてアナウンスを行う。
成績評価方法
レポートにより評価を行う。
履修上の注意
各自で簡単な計算などを行う場合がある。ネットワークに接続可能なノートパソコンやスマホなどを用意しておくことが望ましい。諸々のアナウンスは ITC-LMS での行う。