現代トルコ語の文献講読を行う。毎回テキストを語学と内容の両面から解説しつつ、受講生のレベルに合わせ、読み進めていく。
今年度は例年とは趣向を変え、Sセメスターを通じて、同一のテキストを講読する。講読テキストは、トルコ共和国の科学史研究の第一人者であると同時に、元イスラーム協力機構事務局長、2014年トルコ史上初の大統領直接選挙で野党側候補にもなった(次点で落選)Ekmeleddin İhsanoğluの近著、Medreseler Neydi, Ne Değildi? Osmanlılarda Akli İlimlerin Eğitimi ve Modern Bilimin Girişi(メドレセとは何であったか、何でなかったのか?オスマン朝における理性の諸学の教育と近代科学の導入), İstanbul: Kronik, 2019という科学史の研究書の序文を予定している。
テキストは、20世紀末から今世紀にかけてのトルコにおける科学史研究の発展を振り返る内容であるが、一読するとこの分野に関するトルコの大学制度や学術機関の概観を得ることもできる。著者の政治的立場を反映して語彙の面ではやや保守的であるが、文章は明晰で格調高い。講師はかつて留学生時代に、この異能の研究者である著者の謦咳に接したこともあり、授業では単なるテキストの内容のみならず、関連事項や時代背景、エピソードなども合わせて解説する。