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最終更新日:2024年4月22日
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世界史論
グローバル・ヒストリーglobal history。
本講義は、21世紀に入って急速に進展しているグローバル・ヒストリーの研究動向をふまえ、世界史の大きな流れを、できるだけ系統的に講じるものです。今日におけるグローバル・ヒストリーへの注目度の高さに比べると、日本の大学におけるグローバル・ヒストリーの授業は、現時点ではまだ決して多くはありません。その欠落を埋める役割を、本講義が少しでも果たせたら、と願っています。
グローバル・ヒストリーは、世界史world historyや人類史human historyと基本的に同じ意味と目的をもつことばです。すなわち、地球が、経済・文化的に一体化していく現状をふまえ、従来の各国史を集めた世界各国の歴史ではなく、地球に住む人類の歴史を大局的に叙述する歴史叙述のことです。人類の軌跡を、地域や国を越えた地球の歴史として把握する試みといえるでしょう。
グローバル・ヒストリーのあつかう人類の歴史は、人々が「普遍」をつくりだしていく歴史のことです。普遍とは、異なる人々の共有することのできる超越的な価値観をさします。前近代においては、普遍とは、「神」や「天」、「仏法」などのことばで示されました。近代社会になると、普遍のもつ意味は、「個人の尊厳」や「生存する権利」、すなわち、人権に移行します。人類は、どの地域でも、どの時代でも、このような超越的価値(普遍)を求めて歴史を歩んできました。グローバル・ヒストリーは、このような人類の共通の歩みのあとをふりかえり、未来のより良い世界の見取り図を描こうとする学問です。
なお、教員の専門分野は、文献の読解に基礎を置く文献史学という学問分野です。主な対象地域は、中国大陸の華北であり、主な対象時期は、4世紀から13世紀頃までの約1000年間です。留学し現地調査を行った地域は、東アジアを主とします。そのために、「グローバル・ヒストリー」という講義題目を掲げてはいますが、当然、教員の能力には限りがあり、人類史の全体を満遍なく論じることは不可能です。
そこで、本講義の特色を述べれば、教員の研究経歴をふまえ、東アジアの歴史を比較のモデルmodelとして世界史の大きな構造を分析する点にある、といえるでしょう。授業の内容も、世界各地の歴史に幅広く言及しますが、東アジアが舞台としては一番多くなります。東アジアの歴史にもとづく歴史モデルが、アフロ・ユーラシアAfro-Eurasia大陸(アフリカ大陸とユーラシア大陸を合わせた大陸名称)や南北アメリカ大陸等の地域にも適応できる、ということを具体的に示したいと思っています。
本授業の目的は、世界史の基礎知識を系統的に習得することにあります。そのために、世界史の大きな流れを、「交通」と「都市」と「環境」を鍵概念に用いることで体系的に把握できるように構成しています。教員が長年にわたって調査をしてきました世界各地の都市の写真も、授業の随所に取り入れ、映像資料や絵画、音楽を活用して視覚的・聴覚的に歴史の流れを理解できるように試みます。
世界史の知識は、現在の私たちがおかれている社会状況を把握し、日本や東アジアの歴史を客観的に眺め、わたしたち人類社会の未来を予測するために不可欠です。もちろん、個人一人の力で世界史のすべてを把握することなど、到底できるものではありません。可能なことは、世界史の大きな流れをつかむことで、人類の営みの共通性を認識し、多様な世界の細部に自分独自の意味を見出すことです。21世紀の世界を生き抜くために必要とされる歴史の基礎知識を習得すること、これが本授業の目的であり到達目標です。
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