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最終更新日:2024年4月22日

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現代教育論

教育・学校心理学
 誰もが経験し、かつ言葉としても認知している「教育」。意識的であれ無自覚的であれ、この「教育なるもの」の定義を「教え育てること」として初期設定したり、「学校の中に教育が存在する」と決めつけてしまったりする人が多くないか。もしそうだとすれば、そこに根源的な間違いが潜んでおり、それにより教育実践の可能性が大きく制約されてしまうし、それどころか難題の発生源となることもある。実際、不登校問題など、学校教育の現場で「教師-児童・生徒・学生」関係がうまくいかない背景として、教育者なりの「善意」に基づいた「べき論」が被教育者に一方的に押しつけられるために生じる心理的抑圧の問題が存在しているケースも少なくない。いずれにせよ、教育に対する「思い入れ」の強さがそのまま「思い込み」の強化に転じてしまう愚から脱する必要がある。
 上記のような立場を基本とする本講義は、教育的営為に関して、視野を拡大して把握し直せるとともに、柔軟かつ根本的な発想の転換が図れるような力量を涵養しながら、受講者なりの見識を醸成し創造的に論じられる力を育成することを主目的とする。そのための学習支援戦略は、主に以下の三つである。
 第一に、大前提として、授業構成を「一般教養の一分野としての教育を学ぶ」という発想と「教育を切り口として教養概念を問い直す」という発想との二本柱で成り立たせ、両者を交差させながら展開する。これにより、表層的には学校に焦点化されがちな教育問題の背景には、家族・地域社会・組織等における人間関係や各種メディアの影響などが複雑に絡みあっており、深みと広がりのある心理社会的問題が存在していることを確認する。
 第二に、「教育現場において生じる問題及びその背景」に効果的に迫っていくための手法として、教育問題を「教育の論じられ方の問題」として扱うことを出発点にして、教育学的知識や実践事例などを参照しながら、教育について多角的に検討することにより、受講者が抱えがちな諸々の固定観念を流動化させていく。特に、教育イメージを子どもや学校だけに限定しないとともに、それを「教える-教わる」関係から解放することにより開かれてくる様々な可能性および課題について考察していく。 
 第三に、「教育現場における心理社会的課題及び必要な支援」を考える際に、「教えこみ」から「学びあい」への転換こそが、教育実践として有効であることを、単なる知的理解としてだけでなく、体験的に味わってもらう。具体的には、受講者どうしでペアやグループを組み、お互いの話を傾聴しあう実習を行うことなどにより、親や子ども達、悩みを抱えた教師などに対する接し方を実感してもらい、コミュニケーション問題の解決に不可欠なスキルの基本を経験できるように配慮する。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
30806
CAS-GC1C51L1
現代教育論
佐々木 英和
S1 S2
水曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
1)ガイダンス…「知のサポーター」から「知のプレイヤー」へ 2)教育と学習の論じられ方…“Forecasting”と“Backcasting” 3)教育と制度…「教育を受ける」と「教育される」 4)教育と形成…「教える」と「育てる」 5)教育とメディア…「教わる」と「学ぶ」 6)教育と伝達…「教える」と「伝える」 7)教育と時間…「学習する」と「生活する」 8)教育と大人…「子どもである」と「大人になる」 9)教育と学校…「教育する」と「学習する」 10)教育と地域…「影響する」と「育成する」 11)教育と欲求…「人間を形成する」と「人間関係を構築する」 12)教育と幸福…「個人を育てる」と「社会を育む」 13)補足および総括…「育てられる」と「育つ」
授業の方法
 基本的には講話形式で講義を進めていくが、必要や状況等に応じてワークショップ形式やアクティブ・ラーニング(参加体験型学習)の手法を用いて授業を展開する。特に、何回か経験するうちに、相手の話を傾聴しようとする姿勢が「自ずと身についていた」といった学習成果が生じるよう創意工夫していきたい。2022年度Sセメスターの授業方法については、教室集合型の近接対面的授業形態で行うことを原則とするので、諸事情を考慮し、マスク着用での出席を求める可能性が高い。  本講義は、例年、教室集合型であれ、オンライン授業・ライブ配信形式であれ、「コミュニケーションとは何か?」という主題を通底させて授業計画を遂行している。教育概念について「何らかの価値や目的を実現するための意識的・無意識的なコミュニケーション戦略・戦術・個別実践」と暫定的に理解した上で、授業概念そのものすらも根底から問い直せるような理論枠組みや実践方法等の提供に努める。特に、「いま、ここ」について実践概念と分析概念との双方向から活用することにより、教育コミュニケーションについての考察を、深めるとともに広げていきたい。
成績評価方法
 学期途中と学期末とで2回程度レポートを実施し、それらを基本として成績評価する。この際、単に「こなす学び」の域にとどまらずに、「創り出す学び」の域に達しているかどうかが、評価ポイントの一つになる。なお、授業出席等の日常的要素は、原則的に加点要素として扱う。
履修上の注意
 初回のガイダンスのときに、単位取得の条件や成績評価の基準などについて具体的に説明すると同時に、授業の詳細なスケジュール(具体的な日程)等を示した関連資料を配布する予定である。