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最終更新日:2024年4月22日

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近現代史

 アメリカ合衆国(以下、アメリカと略します)の歴史のなかで、人種とジェンダーがもつ意味にはとても深くて重いものがあります。なかでも、公民権運動は、1964年公民権法と1965年投票権法という立法的成果を勝ち取り、アメリカ現代史のひとつの大きな転機となりました。他方、その後に興隆したブラック・パワー運動は、過剰に人種的矜恃を強調し、時には暴力を唱導することでアメリカ社会の分断に寄与したと一般的には考えられています。  ところがしかし、近年の研究は、公民権運動とブラック・パワー運動は一般に思われているほど大きく異なるものではなく、ブラック・パワー運動が多様なアメリカ社会の構築に向けて残した影響は大きいという議論が展開されています。そこで、このような黒人の社会運動をよりダイナミックに捉えるために、公民権運動とブラック・パワー運動をひとつに統べる〈黒人自由闘争Black Freedom Movement〉という運動史理解の枠組みが生まれてきました。本講義の目的は、アメリカ近現代史の最新の動向を参考にしながら、このような〈黒人自由闘争〉の歴史的な意味を探ることにあります。  公民権運動は一般にもよく知られた運動です。日本においても、多くの人びとがキング牧師の演説を英語で読んだことがあります。では、この運動がいったい何を行ったのかと問うて、それに正確かつ適切に答えられる人はそれほど多くはいないはずです——たとえば、非暴力の運動の指導者であるキング牧師が「わたしには夢がある」と演説したら、レイシストは反省して、黒人は権利を得たという認識はきわめてナイーブです。もしこのようなことが本当に起こるならば、レイシズムの問題はずっと前に簡単に解決されていたはずだからです。一方、ブラック・パワー運動については、邦語文献が少なく、その詳細は日本ではほとんど知られていません。  さて、では、これが黒人自由闘争に関わる理解の現状だとして、公民権運動には強い女性差別があり、それがその後のフェミニズムの興隆を促したひとつの契機となったという事例を紹介すれば、みなさんがすでに持っているこの運動のイメージはどう変わるでしょうか。そこで、本講義では、人種とジェンダーの交差点に光を当てるために、黒人自由闘争の歴史にジェンダーの観点からも分析を加えていきます。  2020年5月、アメリカ合衆国ミネソタ州で起きたジョージ・フロイド氏殺害事件によって、合衆国だけでも1500万人以上が参加する規模の大抗議運動が興りました。ブラック・ライヴズ・マター運動です。この運動が展開されるなかではしばしばこのような問いが聞かれました――公民権運動があったのに、どうしてこのようなことが起きているのだろう。本講義の最後には、歴史学的にこの問いを引き受けて考えます。  なお、以下に各回のテーマをいちおう示しています。しかしながら、大統領選挙関連の出来事等、わけても本年度はアメリカ発のニュースが激増することが予期されますので、本講義の目的と強い関連がある事態が生じた際には、これからアメリカで起きることの解説を積極的に取り上げていく予定にしています。それゆえ、各回の授業テーマには若干の変更があるかもしれません。
・アメリカの政治制度について日本とそれとの比較の上で説明できるようになる
・公民権運動とブラックパワー運動がアメリカ社会にもたらした変化を歴史学的に説明できるようになる
・アメリカ合衆国の近現代史の展開を人種とジェンダーを通じて説明できるようになる
・現代社会において人種が持つ意味を歴史学的に説明できるようになる。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
30797
CAS-GC1B52L1
近現代史
藤永 康政
S1 S2
水曜5限
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講義使用言語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
1.ガイダンス―アメリカ合衆国の政治と社会① 2.ブラック・ライヴズ・マター運動-アメリカ合衆国の政治と社会② 3.長い公民権運動論① 4.長い公民権運動論② 5.学生非暴力調整委員会の結成、人種とジェンダー① 6.学生非暴力調整委員会の結成、人種とジェンダー② 7.冷戦公民権とリベラル・コンセンサス① 8.冷戦公民権とリベラル・コンセンサス② 9.マルコムXの軌跡① 10.マルコムXの軌跡② 12.ブラックパンサー党の挑戦① 13.ブラックパンサー党の挑戦② 14.ブラック・ライヴズ・マター運動へ① 15.ブラック・ライヴズ・マター運動へ②
授業の方法
講義を中心とした授業で、適宜ディスカッションや振り返りを行いつつ、2回でひとつのテーマを消化してきます。各回のテーマには若干の変更があるかもしれません。
成績評価方法
レポートと授業への貢献度で判断します
履修上の注意
予備知識は必要ありません。不明な点があれば、積極的な質問をお願いします。