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最終更新日:2024年4月22日

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社会行動論

社会・集団・家族心理学
 本授業は主に専門領域で言えば、心理学、なかでも社会心理学領域の講義を柱とし、家族心理学を補う。社会心理学は人間関係、集団関係の心理学領域であり、三面記事的な「社会」とは異なる。人間についても、自然法則、経済法則などといった他の分野と同様、あるいは独自の形で法則性が見られ、心理学とは人間を科学的に研究・解析してその法則性を樹立する学問分野である。イメージとしては行動科学、人間科学、認知科学といった用語の方が適合するかもしれない。一方、常に社会との関係性をも意識し、広く人文科学と社会科学をつなげる領域総合的な観点を有することも社会心理学の利点と魅力である。社会心理学分野は多岐にわたり、個人の行動分野から対人行動、自己、対人相互作用、集団過程、集合現象、家族関係など広く、経済学や政治学とも密接な関係をもつ隣接分野である。本講義は全体に目配りしながら、「対人関係並びに集団における人の意識及び行動についての心の過程」、「人の態度及び行動」、「家族、集団及び文化が個人に及ぼす影響」など、「公認心理師」の社会・集団・家族の選択科目分野が学べるような講義になっている。
 人間関係は誰もが一生経験し、どのような職業についても無関係であることはなく、しかしながら単なる「人間関係のノウハウ」のような通俗本に取り上げられているものとは異なる。その知見は、実験や調査などの実証研究を土台とし、定義された専門用語によってはじめて正確に描写、記述することができるきわめて専門的な知識である。その専門的知識は深めるほどに個人の独創的・創造的な応用によってより深く、鋭く日常と接続し、本人の技量にしたがって一生役立てていける知識基盤となる。そして重要なのはそれは自分ためだけではなく、他者のためにもなり、またそれは結局ひいては自分のためであることを利他行動の授業回において明確に示すであろう。また心理学は一般に方法の学問と言われるように、その内容だけでなく、研究方法、知の獲得の仕方に特徴と味わいがあり、物の見方の学習こそが一生用いていくことができる最も応用可能な点である。
 心理学は題材として人間を俎上に載せ、またその人間のひとりは他でもない自分自身であるだろうが、だからと言ってそれは学ばずして十分理解できるものでもなく、そのパースペクティブを獲得することがなければ一生気づかずに過ごしてしまう貴重な知見を豊富に含んでいる。とりわけ進化的なパースペクティブや体内物質、遺伝についての知見は、自分自身で気づくには圧倒的に不可能的なアイデアであったり、鋭く実証的な科学的知見であったりする。そもそも統計解析を重視する心理学にあって、人と環境の交互作用は知見の中心であるが、人は直観的に「交互作用効果」が理解できるように頭脳がしつらえられていない。これはきわめて現代的な進展であり、そうした学問の進展は生涯学び続けなければ、どんどん古びてしまうものである。
 世間で心理学や人間について誤った言説が溢れているのは人が容易に新たな知見を学習しないからであると言っていい。受講者は一生にわたってこれらの知識を現代人として更新していってほしい。そういう意味で本講義の目標はよりよい現代人になることであり、基本的な人間の性質というものへの感受性を高め、その捉え方についてより科学的なスタンスを自分自身に確立させることを目標とする。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
30672
CAS-GC1D35L1
社会行動論
北村 英哉
S1 S2
水曜2限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
YES
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
31859
CAS-GC1D35L1
社会行動論
北村 英哉
S1 S2
水曜2限
マイリストに追加
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
YES
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
第1回 休講の可能性あり。ITC-LMSに文献リストを配付。授業のパワポもITC-LMSに挙げられますのでみてください。 第2回 導入、印象形成、対人認知 第3回 ステレオタイプと偏見 第4回 文化と生態学的要因 第5回 文化と関係流動性 第6回 他者の行動の原因の推測:帰属過程 第7回 自己呈示、制御焦点、自己高揚と卑下 第8回 文化と自己、親子関係、家族の心理学 第9回 態度と説得、認知的不協和 第10回 援助行動、利他行動とソーシャル・サポート(親密な関係) 第11回 攻撃行動と排斥行動 第12回 集団過程と組織心理学 第13回 集団間関係 受講者の反応やリアクションペーパーの様子から理解を高めるように順序を入れ替えたり、内容を取捨選択することもある。
授業の方法
講義形式によって行う。特に理解を促すために質問紙調査、質問紙実験の具体例を体験してもらうことも含み加点の題材とする。 受講者の関心によって順序を入れ替えたり、いくぶん内容を変更、追加したりすることもある。 授業資料は、ITC-LMSに挙げておく他、課題としてYoutubeに上げている授業動画を視聴してレポートを書くこともあるので、ITC-LMSの情報を常に参照すること。
成績評価方法
テストによって約60点、小課題を2回行い1個につき10点満点とする。 リアクションペーパーを小レポートと位置づけ、各回2点を標準とする。質問紙調査参加による加点もある。
履修上の注意
大学の講義は最新知見を伝えることであるので、すべてがコンパクトにおさまった便利なテキストはなかなか見出すことができない。したがって、本講義では指定したテキストには記していないことや範囲も含めて講義を行う。科学的な事柄は5年ほどの間に更新を受けている。授業で語られる情報を土台にしないと試験での高得点は望めないことを指摘しておく。しかし授業を十分理解すればテキストに記してあること、授業で語ったこと以外を突然試験で問うことはしない(単なる例題、具体的な題材は別だが)。そういう意味で学習行動は裏切らないだろう。資料はできる範囲でITC-LMS上に配し、リアクションペーパーによって出席も重視、評価する。
実務経験と授業科目の関連性
小児糖尿病の子どものキャンプで中心的なスタッフ経験を5年間つとめた。また環境問題にとりくむ活動を実践的に行っていた。こうした実務経験により自己、対人行動、人間関係、ソーシャルスキル、環境と社会問題の社会心理学について、実務を生かした深い講義が可能である。心理臨床の経験も臨床社会心理学的知見、認知行動療法の基礎をなす自己と記憶や神経科学、生体内物質の知見への通暁や応用的取り扱いに生かされるものとなっている。