講義内容はおおむね以下の通りであるが,担当教員によっては順序や内容に一部変更が加えられる場合がある.
1. ヘッシアンによる極値判定法:多変数関数の極値判定は広汎な分野に おける重要なテーマである. ヘッシアンと呼ばれる2階偏微分を用いて定まる実対称行列,および対応した2 次形式を行列の対角化の理論を用いて調べることにより,関数が極値を取るため の十分条件を与える. 最大・最小問題への応用や,誤差評価のための最小二乗法なども扱う.
2. ラグランジュの未定乗数法:体積が1の直方体のうちその表面積が最小となるものは何か,という問のように,変数がいくつかの関係式によって拘束されている場合に,多変数関数の極値を考えることがしばしば起こる. これを偏微分法によって判定するラグランジュの未定乗数法を学ぶ. そのための準備として,関係式f(x1,…,xn)=0が与えられたとき,その偏微分に関する適当な条件の下で,一つの変数が他の変数の関数として表されること(陰関数定理)を理解する. 更に,ユークリッド空間上の変換が局所的に可逆であるためのその微分に関する十分条件(逆写像定理)を与え,いくつかの関数の共通零点として表される図形のパラメータ表示について考察する.
3. 重積分の変数変換と高次元極座標:二重積分の平面極座標による変数変換を用いるアイデアは,exp(-x^2)の積分計算を平易なものにした. 高次元空間の球体の体積などは,対称性に着目した変数で書き表し,変数変換を用いることにより求め易くなる. 高次元極座標への変数変換による積分の計算,ラプラシアンの空間極座標表示を用いる計算など,多様な実例を通して変数変換の考え方を学ぶ.
4. パラメータを含む積分, 積分記号下での微分積分:積分,特に広義積分により定義される関数の微分積分を扱う. その基礎理論である関数族の一様収束は,難解な部分もあるが,理学・工学での応用面において極めて有用な理論である. 具体例としてラプラス変換,フーリエ変換(正弦変換,余弦変換),ガンマ関数の導関数などを扱う.