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最終更新日:2024年4月22日
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歴史Ⅰ
東南アジア近現代史概論
本講義では主に19世紀半ばから現在に至るまでの東南アジア史を扱います。東南アジアにおける「近代」であり、おおまかに言うと、独立前と独立後にそれぞれの二つの経路があります。独立前には、東南アジア大陸部においては伝統国家が西洋帝国主義に支配されます。それに対し、東南アジア島しょ部では交易のネットワークが明確な領域を持つ植民地に組み込まれます。その後それぞれが独立していきます。そして、一方では共産主義を国家の体制に組み込まれるベトナムなど、他方では資本主義体制を是とするフィリピン、マレーシア、シンガポールがあります。それが、1990年代前後には市場経済化され、一部の国は民主化されます。
近年では、グローバル・ヒストリーが旺盛であり、歴史認識の単位としての国民国家を乗り越えて、人々の繋がりが強調されます。他方、東南アジアにはインドネシアから東ティモールまで11の国民国家が存在しており、近現代においては、それぞれが固有の歴史を歩んできたと考えることもできます。また、東南アジア地域主義の結実としてASEANが論じられますが、そこでも国家代表による合議という側面も否定できません。
そこで、本講義では、
【第1部】19世紀半ばまでの東南アジア世界
【第2部】各国のナショナリズム、それぞれの植民地主義の影響
【第3部】日本占領の衝撃
【第4部】独立後:共産主義、開発主義、地域主義の模索
と時系列的に扱います。インドネシア、マレー、フィリピン、ビルマ(ミャンマー)、ベトナム、タイ(シャム)の主要なナショナリズムおよび国民国家を中心に取り扱います。ただし、第7回ではラオス、カンボジアを扱い、第9回ではラオス、第11回ではカンボジアにも触れます。第12回では「小国」を論じます。
基本的な認識としては、人権や民主主義の没落の問題はあるにせよ、それなりの共存が達成され、それなりに安定した地域形成がされてきたのが、この地域の特徴です。多様であり衝突するが極端に酷いことにはならない、他者に対する不満はあるが、おおむね大規模な武力衝突は回避する、というような行動様式がそれなり機能してきており、域内の大国が覇権を求めることを自制するという謙虚さもあります。それぞれの国のナショナリズムが強く、国力が増すと覇権や倫理的優位性を求めるという東アジアの近現代史とも、基準を設定しその基準を達成できない人々に対しては暴力と支配を厭わないという西洋の近現代史とも異なる歴史が東南アジアにはあります。本授業では、国民国家中心というやや古臭いアプローチを基調としつつも、この地域に対する理解を深めることを目標とします。
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