(各講の番号は講義の実際の回数とは対応していない)
第1講 民法総論
講義の進め方、予習の仕方等について一般的な説明をした後、重要なカテゴリーについて基本的な説明を行う。社会関係を権利義務関係に還元するという私法の基本的な発想を理解する。契約関係と非契約関係とが民法の体系中で持つ意味を理解する。金銭債権を例にとって、権利の実現のプロセスを概観する。起草課程を中心に歴史の中に民法を位置づける。
第2講 物権とは何か
物権の効力の基本を整理する。物権的請求権を素材として、物権的効力と債権的効力との区別と関連について考える。所有権の対象となる物の性格についての議論を整理する。
第3講 契約とは何か
契約法の中核をなす意思自律の原理とそのコロラリーについて理解する。契約の成立のプロセスについて考える。
第4講、5講 意思表示
契約の成立要件と有効要件との関係を整理する。契約の有効要件の一つとしての意思表示について総論的な説明を行う。意思表示の効力に関する意思主義と表示主義との対立を理解する。「動機の錯誤」をめぐる学説の発展を通じて、理論上の問題の所在を明らかにする。合意に瑕疵がある場合の契約の効力として問題となる取消と無効とについてもここで整理する。その上で心裡留保、虚偽表示、錯誤、詐欺・強迫の各制度について概観する。
第6講 契約の有効性
意思表示と並んで、契約の有効要件に関す公序良俗違反について検討する。
第7、8,9講 不動産物権変動総論
不動産物権変動について所有権の移転を素材として、当事者間での法律関係と第三者に対する関係での法律関係に分けて検討する。前者に関しては所有権移転時期をめぐる問題を取り上げる。後者に関しては登記制度を概観した後、二重譲渡の理論的可能性について検討する。94条2項の類推適用、177条の「第三者」特に背信的悪意者論、「取消と登記」という重要論点について考える。
第10講 権利の主体、契約の主体
法律関係の当事者となるための権利能力、法律行為の当事者となるための意思能力・行為能力の概念を理解する。成年後見制度についても言及する。
第11講、12講 代理
代理制度をまずは理論的に理解した上で有権代理と無権代理、後者について表見代理が成立する場合の具体的な法律問題について検討する。
第14講 共有
団体秩序を取り上げる前提として共有を論じる。その際相続制度について入門的な説明を行う。遺産共有の性格を説明した後に相続と登記という重要論点について取り上げる。区分所有についてもここで一瞥しておく
第15講 法人
法人制度を団体法の一環として取り上げる。法人理論を整理した後、権利能力なき社団の重要問題を検討し、法人の機関特に理事の代表権をめぐる細かな法律問題を取り上げる。
第16、17講 占有・取得時効
法律行為制度を理論的な中核として、不動産物権変動を具体的な紛争局面とした本論を前回で終え、残された問題を補論的に取り扱う。まず、占有秩序に関する議論を取り扱う次いで、取得時効制度を取り上げ、取得時効と登記という重要論点を論じる。
第18講 物権変動の補説
占有制度と深く関わる動産物権変動についてここで取り扱う。動産担保取引のための登記の利用についてもここで言及する。あわせて立木の物権変動特に明認方法について補足する。
第19講 消滅時効
取得時効とは相当に異質な消滅時効についてここで取り扱う。時効総論もここで触れる。併せて条件と期間についても言及する
第20講 所有権の補説
原始取得の諸態様、特に附合についてここで補足する。囲繞地通行権等、所有権の効力についての細かな問題についても補足する。