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ラテンアメリカの移行期正義―真実・正義・和解・記憶

 「移行期正義」とは、独裁や内戦状態から脱した国で、過去に犯された深刻な人権侵害にいかに対処するかという問題領域であり、具体的な措置としては、加害者の訴追(または免責)、真相究明委員会の設置、被害者への賠償、記念行事、国家による謝罪、加害者の公職追放、再発防止のための制度改革などが含まれる。1970年代末から民主化の波を経験したラテンアメリカは、今日世界的潮流になっている移行期正義の発祥の地と見なされている。
 独裁や内戦を脱したラテンアメリカの諸国は、難しいジレンマに立たされた。どの国でも、軍が大きな力を保持しており、加害者の責任を本格的に追求するとクーデターを誘発する恐れがあった。しかし人権侵害の犠牲者やその家族たちは、加害者の処罰や真相の究明を求めて粘り強い運動を展開した。その結果、いまだ不十分であるものの、国際的な比較の観点で言えばラテンアメリカは、移行期正義が相対的に進展した地域となっている。本演習は、ラテンアメリカの移行期正義の経験から、そこに絡む様々な問題について考察する。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
25-304-53
GLP-LP6316S1
ラテンアメリカの移行期正義―真実・正義・和解・記憶
大串 和雄
A1 A2
月曜5限
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教室
法文1号館 A2演習室
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
法学政治学研究科
授業計画
 まずはじめに人権侵害の実相を知ってもらうために、グアテマラの人権侵害に関する日本語の報告書を読む。残りの授業期間は、ラテンアメリカの移行期正義の様々な側面を扱った英語論文を輪読する。事例としては、2016年に反政府ゲリラFarcと和平合意を締結し、野心的な移行期正義プロジェクトを発進させたコロンビアを扱った文献を多く使用する。  原則として2月に合宿を行い、履修者が移行期正義に関連する報告をする。報告の内容はケーススタディでもよいし、移行期正義の特定の側面(テキストで取り上げたテーマに限る必要はない)に関するものでもよい。また、ラテンアメリカ以外の地域を専門としている院生の場合は、その地域を対象とする報告でもよい。
授業の方法
履修者は全員がテキストを読み、毎回コメント・質問を提出する。また、英文テキストについては、当番制でレジュメを提出する。毎週の授業はあらかじめ提出されたレジュメおよびコメント・質問の検討を中心に行なう。1週間に読む英語論文の分量は、少ない週で16ページ、多い週で37ページを予定している。授業は原則として毎回延長する。合宿は履修者の人数により、1泊または2泊で行う。日程は履修者と相談して決定する。
成績評価方法
課題の提出と内容、授業における貢献、合宿の発表による。
教科書
一部差し替えの可能性があるが、以下の文献を予定している。すべてこちらでpdfファイルまたはハードコピーを提供する。 (1)歴史的記憶の回復プロジェクト編『グアテマラ 虐殺の記憶―真実と和解を求めて』飯島みどり・狐崎知己・新川志保子訳、岩波書店、2000年。pp.3-78, 125-178. (2)Geoff Dancy; and Verónica Michel, "Human Rights Enforcement From Below: Private Actors and Prosecutorial Momentum in Latin America and Europe," International Studies Quarterly, 60(1), March 2016, pp.173-188. (3)Hector Olasolo; and Joel M. F. Ramirez Mendoza, "The Colombian Integrated System of Truth, Justice, Reparation and Non-Repetition," Journal of International Criminal Justice, 15(5), December 2017, pp.1011-1047. (4)Sebastián Riomalo Clavijo, "Conflicting Approaches to Peacebuilding? Explaining Political Attitudes towards Armed Conflict Issues in Colombia through Ideas and Interests," Colombia Internacional (Universidad de los Andes), No.89, January-March 2017, pp.81-108. (5)Jamie Rebecca Rowen, "“We Don't Believe in Transitional Justice:” Peace and the Politics of Legal Ideas in Colombia," Law & Social Inquiry, 42(3), Summer 2017, pp.622-647. (6)Enzo Nussio; Angelika Rettberg; and Juan E. Ugarriza, "Victims, Nonvictims and Their Opinions on Transitional Justice: Findings from the Colombian Case," International Journal of Transitional Justice, 9(2), July 2015, pp.336-354. (7)Angelika Rettberg; and Juan E. Ugarriza, "Reconciliation: A Comprehensive Framework for Empirical Analysis," Security Dialogue, 47(6), December 2016, pp.517-540. (8)Juan Diego Prieto, "Together after War While the War Goes On: Victims, Ex-Combatants and Communities in Three Colombian Cities," International Journal of Transitional Justice, 6(3), November 2012, pp.525-546. (9)Kimberly Theidon, "Intimate Enemies: Reconciling the Present in Post-war Communities in Ayacucho, Peru" in After Mass Crime: Rebuilding States and Communities ed. by Beatrice Pouligny; Simon Chesterman; and Albrecht Schnabel (Tokyo: United Nations University Press, 2007), pp.97-121. (10)Mijke de Waardt, "Naming and Shaming Victims: The Semantics of Victimhood," International Journal of Transitional Justice, 10(3), November 2016, pp.432-450. (11)Nathalie Koc-Menard, "Notes from the Field: Exhuming the Past After the Peruvian Internal Conflict," International Journal of Transitional Justice, 8(2), July 2014, pp.277-288.
参考書
(1) 大串和雄「罰するべきか許すべきか―過去の人権侵害に向き合うラテンアメリカ諸国のジレンマ」『社会科学ジャーナル』国際基督教大学、第40号、1999年2月、139~160ページ。東京大学学術機関リポジトリからダウンロード可能。URLは、http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/ (2) 杉山知子『移行期の正義とラテンアメリカの教訓―真実と正義の政治学』北樹出版、2011年。
履修上の注意
履修の可能性がありながら何らかの理由で初回の授業に出席できなかった場合は、履修の意思(または少なくともその可能性があること)をメールで知らせてください。初回の授業に欠席し、メールによる通知もない場合には、履修登録をしても履修が認められないことがあります。