大学院
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最終更新日：2025年4月21日
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資本主義と民主主義の危機
資本主義と民主主義の危機
リーマン・ショック、3.11、安倍一強、ユーロ危機、難民危機、トランプ現象、新型コロナ禍……。今も昔も、自分の世界観を揺るがす出来事に直面した人々は、そこに何らかの危機の兆候を見出す。民主主義は崩壊するのではないか、資本主義もはや持続不可能なのではないか、などといった禍々しい予言が何度も行われてきた。こうした予言は今のところ実現していないが、そのような予言が行われるという現象自体、実に興味深い。なぜ人々は、資本主義や民主主義の危機が起きるなどと考えるのだろうか。
それは、今から約100年前、実際に危機の時代が訪れたことがあったからである。ヨーロッパにおける第一次世界大戦後の約20年間の戦間期は、世界大恐慌とファシズムの時代であり、第二次世界大戦とホロコーストに至る時代であった。今日における各種の危機の予言は、基本的に、この時代のヨーロッパとの類似性を現代日本に見出す試みであるといえよう。その予言が外れ続ける理由があるとすれば、それは、今日の世界と戦間期ヨーロッパの置かれた歴史的条件が異なっているからに他ならない。
だが、日本において戦間期のヨーロッパを学ぶことには、そのような政治史的な関心を超えた意味がある。今日では忘れられがちであるが、この危機の時代は、20世紀後半に隆盛したアメリカ政治学の源流であった。デュヴェルジェの法則、政党の空間競争モデル、ネオ＝コーポラティズム論、合意型民主主義論、民主主義の崩壊、抑止理論、覇権安定論など、今日の政治学の教科書に掲載されているアメリカ政治学の学説の多くは、この戦間期ヨーロッパの経験に大きな影響を受けている。
このことの含意は、決して無視できるものではない。なぜなら、それは政治学の理論がどれほど普遍性を志向するにせよ、その起源には、特定の時間と空間に基礎付けられた歴史の理解が存在していることを意味しているからである。しばしばアメリカ政治学の理論は非歴史的であるとされることも多いが、そのような理解はおそらく正しくない。むしろ、その理論は驚くほど深く歴史に規定されている。アメリカ政治学の理論を学ぶ人は、実は少なからぬ場合、戦間期ヨーロッパの歴史を学んでいるとも言えるのである。
そうであるとすれば、この「破滅の時代」のヨーロッパを知ることは、政治学の現在地を理解するための重要な機会を提供するであろう。教科書に掲載されているような学説を生み出した政治学者たちは、いかなる現実と向き合い、そこから何を学んだのか。その視点にはどのような特徴があり、何がそこから抜け落ちていたのか。以上の問題関心から、この授業では戦間期ヨーロッパの政治と経済に関する研究動向の理解を深めるべく、1980年代以降の重要な文献を読む。
それは、今から約100年前、実際に危機の時代が訪れたことがあったからである。ヨーロッパにおける第一次世界大戦後の約20年間の戦間期は、世界大恐慌とファシズムの時代であり、第二次世界大戦とホロコーストに至る時代であった。今日における各種の危機の予言は、基本的に、この時代のヨーロッパとの類似性を現代日本に見出す試みであるといえよう。その予言が外れ続ける理由があるとすれば、それは、今日の世界と戦間期ヨーロッパの置かれた歴史的条件が異なっているからに他ならない。
だが、日本において戦間期のヨーロッパを学ぶことには、そのような政治史的な関心を超えた意味がある。今日では忘れられがちであるが、この危機の時代は、20世紀後半に隆盛したアメリカ政治学の源流であった。デュヴェルジェの法則、政党の空間競争モデル、ネオ＝コーポラティズム論、合意型民主主義論、民主主義の崩壊、抑止理論、覇権安定論など、今日の政治学の教科書に掲載されているアメリカ政治学の学説の多くは、この戦間期ヨーロッパの経験に大きな影響を受けている。
このことの含意は、決して無視できるものではない。なぜなら、それは政治学の理論がどれほど普遍性を志向するにせよ、その起源には、特定の時間と空間に基礎付けられた歴史の理解が存在していることを意味しているからである。しばしばアメリカ政治学の理論は非歴史的であるとされることも多いが、そのような理解はおそらく正しくない。むしろ、その理論は驚くほど深く歴史に規定されている。アメリカ政治学の理論を学ぶ人は、実は少なからぬ場合、戦間期ヨーロッパの歴史を学んでいるとも言えるのである。
そうであるとすれば、この「破滅の時代」のヨーロッパを知ることは、政治学の現在地を理解するための重要な機会を提供するであろう。教科書に掲載されているような学説を生み出した政治学者たちは、いかなる現実と向き合い、そこから何を学んだのか。その視点にはどのような特徴があり、何がそこから抜け落ちていたのか。以上の問題関心から、この授業では戦間期ヨーロッパの政治と経済に関する研究動向の理解を深めるべく、1980年代以降の重要な文献を読む。
時間割／共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
25-304-19
GLP-LP6306S1
資本主義と民主主義の危機
前田 健太郎
火曜2限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
可
開講所属
法学政治学研究科
授業計画
毎回、英語文献を100ページ程度読む。
授業の方法
報告者にはレジュメの作成は求めない。毎回、課題文献の内容を担当教員との質疑応答を通じて確認する。学期末に、課題文献を踏まえたレポートまたは研究計画を作成すことを求める。
成績評価方法
出席と参加状況で評価する。
教科書
以下の文献を順番に読む。文献はITC-LMSにアップロードする。
1. Maier, Charles S. 1975. Recasting Bourgeois Europe: Stabilization in France, Germany, and Italy in the Decade after World War I. Princeton University Press. Introduction; Maier, Charles S. 1987. In Search of Stability: Explorations in Historical Political Economy. Cambridge University Press. Chs.1 & 4.
2. Panitch, Leo. 1977. "The Development of Corporatism in Liberal Democracies." Comparative Political Studies 10(1): 61-90; Katzenstein, Peter J. 1985. Small States in World Markets: Industrial Policy in Europe. Cornell University Press. Ch.4.
3. Gourevitch, Peter. 1986. Politics in hard times: Comparative responses to international economic crises. Cornell University Press. Ch.4; Rogowski, Ronald. Commerce and Coalitions: How Trade Affects Domestic Political Alignments. Princeton University Press, 1990. Ch.3.
4. Luebbert, Gregory. 1991. Liberalism, Fascism, or Social Democracy. Oxford University Press. Chs. 6-8
5. Eichengreen, Barry. 1992. Golden Fetters: The Gold Standard and the Great Depression, 1919-1939. Oxford University Press.Ch.10-12.
6. Hobsbawm, Eric. 1994. The Age of Extremes. Vintage. Chs. 2-4
7. Mazower, Mark. 1998. Dark Continent: Europe's Twentieth Century. Vintage. Chs.1-4
8. Offen, Karen M. 2000. European Feminisms, 1700-1950: a political history. Stanford University Press. Chs. 9-11
9. Frieden, Jeffry A. 2006. Global Capitalism: Its fall and rise in the twentieth century. WW Norton & Company. Chs.6-10.
10. Mann, Michael. 2012. The Sources of Social Power Volume 3: Global Empires and Revolution, 1890-1945. Cambridge University Press. Chs. 8-10.
11. Kershaw, Ian. 2015.To Hell and Back: Europe 1914-1949. Penguin. Chs.4-6.
12. Maier, Charles S. 2014. Leviathan 2.0. Harvard University Press. Ch.4.
参考書
特になし。
履修上の注意
政治史の授業ではないので、注意すること。
