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最終更新日:2022年10月20日

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国家論

近代社会と国家
「日本は、先進国なのだろうか」。近年、このような疑問を耳にすることが増えた。それは、単に国民の一人当たりGDPから見た日本の国際的な地位の低下を嘆く場合に限られない。デジタル技術の利用であれ、ジェンダー格差であれ、日本における日常生活に関わる幅広い事柄が、外国との比較で「進んでいる」、あるいは「遅れている」といった言葉で表現されてきた。おそらく、それは何らかの意味で文明的な暮らしが行われているかどうかを示す用語なのである。そうだとすれば、その文明的な暮らしとは、一体何を意味するのだろうか。

この問題を取り上げる理由は、今日の政治状況にある。かつての日本であれば、「進んでいる」国とは、アメリカやフランスといった欧米諸国であり、そうした国々の事情を学ぶことこそが文明への道であった。ところが、近時の欧米各国におけるポピュリズム現象や新型コロナウイルス対策の迷走の中で、こうした19世紀以来の慣行は影を潜めつつある。このような世の中では、どの国が日本の目指すべきモデルであるのか、もはや明確な指針はない。むしろ、逆に日本の現状に居直り、積極的に肯定する態度も見られるようになってきた。

だが、こうした態度は、決して望ましいものではあるまい。かつて輝きを放っていた欧米社会が、今日混乱を見せているのだとすれば、この両者のどちらか一方だけを取り上げて評価することには無理がある。むしろ、そのかつての輝きの中にこそ、今日の欧米社会の混乱の萌芽が宿っていたと考えるべきではないか。

このような問題関心から、今年度の演習では、この問いに対する一つのヒントを提供する作品として、ノルベルト・エリアスの『文明化の過程』を通読する。本書で語られるのは、資本主義の発展の成功物語でもないし、また、文明の名の下に世界各地を植民地化する帝国主義への批判でもない。その主題は、私たちの身近な生活習慣を柔らかく変えてゆく近代国家の作用である。本演習では、このエリアスの名著を、マルクスやウェーバーとの比較の中で、一つの独創的な国家論として読み解くことを目指したい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
25-304-18
GLP-LP6306S1
国家論
前田 健太郎
S1 S2
火曜4限
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教室
法文1号館 A1演習室
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
法学政治学研究科
授業計画
カール・マルクスとマックス・ウェーバーの考え方をある程度踏まえた上で、『文明化の過程』の日本語版を通読する。章によって難易度が大きく異なることに鑑み、毎回30ページ〜70ページ程度のペースで進む。時間が許せば、エリアスの理論を踏まえて書かれた最近の英語文献の一部を読む。
授業の方法
報告者には、1度はレジュメによる報告を行うことを求める。また、毎回、短いコメントを用意することを求める。
成績評価方法
報告内容および出席状況に基づいて評価する。
教科書
下記の文献の一部または全体を講読する。資料は当方で用意する。 ノルベルト・エリアス 1977『文明化の過程(上)』法政大学出版局. ノルベルト・エリアス 1978『文明化の過程(下)』法政大学出版局. カール・マルクス&フリードリヒ・エンゲルス『共産党宣言』講談社学術文庫 マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波文庫 Pachirat, Timothy. 2011. Every Twelve Seconds: Industrialized Slaughter and the Politics of Sight. Yale University Press.
参考書
エリアスの訳文の理解が難しい箇所については、次の英語版を参照する。 Elias, Norbert. 2000. The Civilizing Process: Sociogenetic and Psychogenetic Investigations. Wiley-Blackwell.
履修上の注意
政治思想史の演習ではないので、注意すること。