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最終更新日:2024年4月22日
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アジア政治外交史史料講読
清末の中国国家構想を考える……梁啓超を中心に
中国の内政と外交を取り巻く諸環境は、新型コロナウイルス問題を経て、これまでの改革開放とは全く異なる新しい段階に入った。
習近平政権は、マルクス主義をも中国化した中国文明の凝集力や創造性を強調し、かつてない生産力や技術力によって「中華民族の偉大な復興」「中華民族共同体意識の鋳牢」を実現すると説き、中国の力が米国と西側を凌駕する中で全ての中国人が「発展権」を充足し幸福を得られるという「中国夢」の境地に至ると主張する。そのためにも、「社会の安定」を担保する党の領導(指導)と統制を強めて「大一統」と「融合」を実現し、「多元化世界」の中で中国がこのような政治社会モデルをとることを認めた国に恩恵を提供することで、真に平和的な国際秩序を実現するという。
それは伝統的な「天下」の秩序の21世紀版のように見えて、個人からグローバル社会に至るまで確実に管理しようとするものであり、中国文明の歴史に照らしても相当異なる秩序・思想をはらんでいる。しかも外部世界との関係についても、中国が外からの影響を受けることについては極めて警戒的で、危機や矛盾があるからこそ外部世界に学び参考にするという清末以来の近現代史とは相当異なり、「天朝」への昔帰りを確かに見せている。
しかしその一方で、中国、さらには華語文化圏の状況を広くみると、このような中国政治の現状と、それゆえに加速度的に広がる諸矛盾に対する様々な疑問が広がり、むしろ思想面を含めて外の世界とのつながりを深めることで打開を図ろうとする動きがあるように思われる。
したがって今や、清末から約120年の時を隔てて、再び中国文明世界は清末的な状況を迎えたと言って良いであろう。伝統と近現代、そして近未来が複雑に交錯し、かつてない統制と百家争鳴が併存する時代となっている。だからこそ改めて、中国の近現代とは何だったのかを回顧し、その手がかりとして清末という時代における政治的課題に立ち返って考えてみることが大切ではないか。またその際には、日本という場がかつて清末政治思想の揺り籠であったという問題も重要である。
本演習ではこのような問題意識に基づき、近代中国・東アジアにおける正負の政治的・思想的課題が数多く現れた時代として19世紀末〜1911年にかけての清末に焦点を当て、この時代の国家論を原典で正確に読み、現代日本語で表現する訓練を行う。そして、これら諸議論の歴史的意義や今日的意味 (特に、20世紀の東アジアにおけるナショナリズムと政治体制) について、さまざまに議論できればと考えている。
扱う原典としては、梁啓超『飲氷室文集』・『清末籌備立憲❊ة案資料』・『民報』などを考えている (参加者のリクエストにお応えすることも考えている)。
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