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最終更新日:2025年4月21日
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政治体制と経済成長・配分
政治体制と経済成長・格差
(Political Regimes and the Economic Growth-Redistribution Dilemma)
現代においては、政治体制を問わず、政治指導者は、経済の国際化という制約条件の下、経済的自由と配分的平等(正義)という政治の根元的価値に関わる経済の成長戦略と再配分政策の策定・実現を迫られる。それにも関わらず、最近の比較政治体制(移行)論や政治経済分析において、 整合性が担保されてない成長政策と再配分政策の同時的追求が特定の政治体制でどのように決定され、それが統治にどのような影響を与えるかの基本的問題に答えられていない。このゼミはこの間隙を果敢に埋めようとする試みである。
“Who gets, what, when, how” (Laswell) という政治の古典的定義は、分配問題に焦点を当てているだけに、経済の成長問題(coming out of where)と再配分問題(at whose cost)の議論が希薄になっている。この欠落は、現代政治経済の分析にとって深刻な問題である。実際、Svolik, Gandhi, Wright, Brownlee, に代表される近年の政治体制論は「成長」のための体制移行を議論一方で、Acemoglu and Robinson, Boix, Ansell and Samuels, Haggard and Kaufmanの体制移行に関する論考はそれへの「格差・不平等」の影響を論じ、両者の間の交流・接点はない。つまり、自由市場経済の特徴である「格差を伴う成長」の促進と「成長の帰結としての格差」の是正問題が各政治体制の政府の存続にどのような影響を与えるかの 理論的解明は未だ十分になされていないと言える。しかし、経済国際化の下での成長と再分配をめぐる政治的対立こそが政治変動の要因であることは、多くの実証研究、特に最近の新興民主国の研究があますと所なく明らかにしている。
そこで、本講では80年代以降、現代に至る「民主化の第三の波」(とその後退)の下での経済の国際化とその停滞に射程を限定して、経済の成長と配分の追求がどのように特定の政治体制の強化と動揺をもたらすかを、異なる政治体制での政党の役割に焦点を当てて、探訪する。このことを通し、同時代的変化を理解する上で有用な政府の経済政策課題と政治体制変動に関する柔軟で汎用的理論の可能性を模索する。
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