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最終更新日:2024年10月18日

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法哲学の基本問題(5)

法哲学の基本問題(5)――構造的不正義
 今年度の授業では、「構造的不正義 structural injustice」について理論的に検討します。

 現在の世界には、構造的不正義が蔓延しています。構造的不正義は、一人の個人の行為によって引き起こされるわけではありません。多数の人が関わる社会のプロセスを通じて生じてくるのが、構造的不正義です。構造的不正義の例として挙がられる事例は、性差別や移民差別、グローバルな貧困、植民地支配、気候変動など多種多様です。つまり、現代社会で問題となる不正義の多くは、構造的不正義です。

 構造的不正義は、そのメカニズムと解決策について、困難な理論的課題を突きつけています。第一に、当事者が必ずしも不正な意図を持っていないにもかかわらず、構造が不正義を引き起こしてしまうとき、そのメカニズムを解明することが必要です。第二に、現実に生じている構造的不正義を解決するためにどうすべきかを検討することも不可欠です。例えば、構造的不正義に対応するとき、過去志向的に構造的不正義に加担した者の責任を追及すべきなのか、あるいは未来志向的に構造を変革するために過去の責任を無視すべきなのか。構造変革に協力しない人が出てきたとき、他の人は自分の担当分だけで行えばよいのか、あるいは協力しない人の分まで行う必要があるのか、それとも自分の担当分さえしなくてよいのか。構造的不正義の犠牲者も、構造を変革する責任を負うのか。検討を要する課題は山積しています。

 この授業では、構造的不正義に関する基本文献と最新のテキストを検討することを通じて、構造的不正義のメカニズムと解決策について、徹底的に議論して考えていきます。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
25-303-002
GLP-LP6201S1
法哲学の基本問題(5)
瀧川 裕英
S1 S2
火曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
法学政治学研究科
授業計画
指定のテキストを毎回、英文であれば1~2章程度、日本語訳であれば3~4章程度、扱います。
授業の方法
演習形式です。 担当者には、担当の8日前にレジュメを配布してもらいます。 他の参加者は、事前にテキストとレジュメに目を通しておきます。 当日の議論は<ボトム・アップ討論方式>で行い、全員に参加してもらいます。
成績評価方法
平常点によります。 具体的には、①議論への参加と②担当した報告によって行います。
教科書
Goodin, Robert E. (2023). Perpetuating Advantage : Mechanisms of Structural Injustice. Oxford: Oxford University Press. https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/***** 主たるテキストです。電子書籍が利用可能です。 Haslanger, Sally. (2012). Resisting Reality: Social Construction and Social Critique. Oxford: Oxford University Press. chap.11 Oppressions: Racial and Other Haslanger, Sally. (2016). What is a (Social) Structural Explanation? Philosophical Studies, 173(1), 113–130. https://doi.org/***** Young, Iris Marion. (1990) Justice and the Politics of Difference. Priceton: Princeton University Press. 飯田文雄ほか訳『正義と差異の政治』(法政大学出版局, 2020) Young, Iris Marion. (2011) Responsibility for Justice. Oxford: Oxford University Press. 岡野八代・池田直子訳『正義への責任』(岩波書店, 2022)
参考書
関連文献については、適宜示します。
履修上の注意
授業時間は延長します。 対面参加を履修の条件とします。 担当者には、担当の8日前にレジュメを配布してもらいます。 他の参加者は、事前にテキストとレジュメに目を通しておきます。
その他
【開講年度の予定】次年度も開講