Guillaume Leroy, La pratique du précédent en droit français Étude à partir des avis de l'avocat général à la Cour de cassation et des conclusions du raporteur public au Conseil d'État (Préface de Frédéric Rouvière), th. Aix-Marseille, LGDJ, 2023を輪読する。
本演習の問題関心は、以下の通りである。
実定法の解釈論において先例を参照して議論するという営みは、我々にとって親しみのある方法である。実際、我が国の最高裁がその判決理由において先例を参照するのは、日本法が英米法系と異なり文字通りの意味での先例拘束性に親しみがないにも拘らず、通常のことである。
同書は、やはりそのような拘束力の存在しないフランスにおいて、フランスの判例形成過程における先例の役割を明らかにすると共に、その理論的意義を考察するものである。やや我が国におけると様子を異にするのは、そこで取り上げられる素材が、最上級審(例えば、破毀院Cour de cassation)判決そのものではなく、その起草準備段階において先例précédentが頻繁に参照されるという事実であることにある。
いずれにせよ先例を参照しつつそことの距離を図りながら法的立論を行うという作業がなされるということだとすると、我が国とフランスは似たような姿をしているようにも見える。しかし、同書から垣間見えるフランス法の先例なるものに対する態度は、我が国の裁判官あるいは法律家が先例に対して取っていると思われる態度と必ずしも同一でない。このことは、法的論拠付けという作業に何を期待しているのか、また司法と立法の権限の分配の在り方についてどのように考えるか、といった基礎的な問題とも無関係ではない。