大学経営事例研究の授業では、質的なデータを収集し、それを分析する方法について、実践をしながら学ぶことを目的としています。量的な分析と質的な分析はそれぞれに強みと弱みがあり、それらを組み合わせることで、問いに対してより深い理解が得られることも多く、様々な分析手法を身につけることはとても重要です。大学経営・政策コースでも、インタビュー等の質的データを用いて、修士論文・博士論文を執筆する方は少なくないですが、収集したデータをどのように整理・分析して、論文にしていくのか、というところで悩みを抱える方が少なくありません。量的な方法と異なり、研究枠組みや仮説が最初からあるわけでなく、流動的であるため、その探索的な過程を楽しむというよりも不安に感じる方も多い印象を受けています。
質的データの方法論については、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)、エスノグラフィー、ナラティブ分析などの様々な手法が開発されてその解説本も多く出ていますが、一部ではやや技術的な工夫に片寄りすぎて、かえって使い勝手が悪い方法論もあるように感じています。質的な分析の基礎は、インタビューで得た発話を文字にして、それらをうまく言い表す名称や文句を抽象化してラベルを貼ることを通して、何らかのパターンを見出すコードをふり、類似したコードでカテゴリーを作り、それらの関係性などについて、カテゴリー/テーマをつなげ、データを説明するストーリーを構築するというところにあると考えます。また、この手の手法は実践してみて、獲得していくことがとても重要だと考えます。そこで、本授業では、古典的な手法ともいえるKJ法(言葉の組み立て工学)に着目して、それを実践してみることで、質的な方法論についての理解を深め、実際に使えるようになることを目指します。
詳細は、第1回の授業で説明するので、履修を希望する者は必ず出席のこと。