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最終更新日:2024年4月22日

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比較大学論

大学の比較的考察、および歴史的考察を行う。 この授業では、大学を比較と歴史の視点から考察することにより、大学に関する複眼的かつ幅広い視野を獲得することを目標とする。主にアメリカの大学を対象に講義を行うが、アメリカの大学に関する知識を習得すること自体が目的ではなく、比較史的考察を通して、各受講者が大学に関する思考を深めることを重視する。
大学とは本来、普遍的な知の拠点として、国や地域の枠組みにとらわれずに世界的に知的活動を展開させる性格を潜在的に有している。一方、近代社会の成立以降、大学が本質的な機能として担ってきた高等教育は各国の教育制度において人材養成・配分機能の重要な一角を担い、ゆえに、教育内容の特性、中等教育制度との関係、労働市場との関係などの点において、その構造と機能は国ごとの独自性を持っている。また、大学の活動のもうひとつの主軸である研究活動は、それ自体は普遍性を志向する活動であるが、その具体的態様は、研究資金と研究の場の提供を通じて社会における諸勢力(とりわけ政府)との関係に規定されており、その実態は国によって異なっている。すなわち、大学は本来的な性向として普遍性を追求しつつも、その教育機能をとっても研究機能をとっても、あるいは社会貢献機能をとっても、現実的には各国の政治・経済・文化等、広い意味での社会の諸条件の中でそれら機能を果たしている社会的組織である。またそこでは、それら諸条件の時代的変化の中で歴史的に形成されてきた大学の外的・内的構造が紐帯として現実の大学のあり方を大きく規定してもいる。
 大学・高等教育について包括的な理解を持つ上では、普遍的・一般的な大学のあり方を各国の特殊性を捨象して捉えることが必要である。しかし、大学・高等教育は歴史的な社会変動や各国独自の社会的諸条件から独立して真空の中に存在しているわけではない。それゆえ、大学・高等教育をその実態を伴ったかたちで把握する上では、歴史的にみた大学・高等教育の変容、各国の諸条件の違いを反映した大学・高等教育の特殊性を視野に入れなければならない。さらには、そのことと関係しつつ、大学という存在の定義自体が国によって異なり、またとりわけ現代では一国の内部でも多様化しているという実態を踏まえるとき、そもそも大学をどう定義付けうるのかという問題自体、一義的な解答を与えられる問いではない。
 本講義では、アメリカの大学を対象に検討を行うが、それは、アメリカの大学が戦後日本の大学改革のモデルとなり、あるいは現在世界で大学改革のモデルと位置付けられていることが直接の理由ではない。アメリカの大学システムは高度な多様性を備えており、その多様性の検討を通して、大学・高等教育のあり方を多角的に検討し、我々の持つ大学像を拡張することが主な目的となる。さらには、教育や学術、社会との連携など、多方面でこれまで様々な取組が行われてきた歴史を振り返る中で、現代の問題にも通じる、大学・高等教育の本質的な使命や課題にアプローチする視座を、本授業を通して培ってもらいたい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
23-214-05
GED-IE6400L1
比較大学論
福留 東土
A1 A2
土曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教育学研究科
授業計画
1導入講義/データにみる日米の大学 2多様な大学:カーネギー大学分類の分析 3比較・歴史研究の射程と方法/アメリカ大学の構造的特質 4テーマ別日米比較(1):学士課程教育 5テーマ別日米比較(2):入学者選抜 6テーマ別日米比較(3):大学院教育 7アメリカ大学史(1):カレッジの時代 8アメリカ大学史(2):アメリカのリベラル・エデュケーション 9アメリカ大学史(3):ユニバーシティへの胎動と実務的教育の展開 10アメリカ大学史(4):拡大と多様化・階層化と標準化―19世紀末から20世紀前半の大学 11アメリカ大学史(5):大衆化・民主化・多文化主義―戦後の大学 12コロナ禍における大学の日米比較 13研究大学モデルに関するケーススタディ
授業の方法
講義はできるだけ事前講義または補足講義とし、授業中は受講生の発表、およびディスカッションを重視する。講義と資料の配信にGoogle Classroomを用いる。 授業の課題は以下の4つとする。 1.事前課題:授業に先立ち、指定の課題論文を読んでくること。授業の補足講義がある場合はそれを視聴してくること。授業では、グループディスカッションなど討論形式を多く取り入れるので、必ず事前課題を行ってくること。 2.授業での発表:単位取得を希望する受講生は、学期中に一度授業内での発表を行うこと。以下の2つからいずれかを選択すること ①事前課題に関する発表:事前課題に関する発表を授業中に行う。 ②特定のテーマや大学に関する発表:比較・歴史研究に関わって関心あるテーマや大学がある場合、それらに関する発表を行う。この場合、関連するテーマを扱う回で発表してもらうよう、調整する。 発表の分担は追って決める。 3.リフレクションシートの提出:毎回の授業内容に関する、質問・コメントを書くこと。授業の翌火曜日までにClassroom上のフォームから提出すること。その日の授業を通して関心を持った点、考えたこと、質問などを自由に書くこと。重要なコメント・質問は次回授業で取り上げる。 4.期末レポート:学期末にレポートを作成すること。テーマは各受講生が自由に設定してよい。授業で発表した課題を元に書いてもよいし、授業で扱ったテーマや関連する内容について自分でテーマを立てて執筆してもよい。 執筆分量はA4用紙4枚程度とする。提出期限は2月上旬とする。正確には別途連絡する。
成績評価方法
授業での発表25% 課題、ディスカッション、リフレクションを含めた授業への貢献度35% 期末レポート40%
教科書
主に講師作成の資料による。以下は授業前半で用いる論文の一部。詳細は開講時に指示する。 ロジャー・ガイガー(福留東土・張燕訳)「アメリカ高等教育史」。 福留東土「大学の理念・制度・歴史」大学経営・政策コース編『大学経営・政策入門』東信堂、2018年、20-38頁。 Robert Birnbaum, "Governance and Management: US Experiences and Implication for Japan's Higher Education." William Tierney, "Globalization, International Rankings, and the American Model: A Reassessment."
参考書
Altbach, Berdahl & Gumport (Eds.), American Higher Education in the Twenty-first Century. フレデリック・ルドルフ『アメリカ大学史』 潮木守一『アメリカの大学』 中山茂『大学とアメリカ社会』 ほか、適宜、授業中に提示する。
履修上の注意
できる限り毎回ハイフレックス方式(受講生が対面とオンラインを選択可能)で授業を行う。 オンラインのみでの開講となる場合には事前に連絡する。