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最終更新日:2024年4月22日

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市民社会・国家・教育

教育と社会保障の関係性・再考
近年、社会政策において教育の役割への関心が高まっている。
例えば、就学前の子どもへの保育・教育投資が長期の貧困リスクの削減につながることが指摘され、また、雇用の流動化の中で、職場の外部で職業訓練を行い「自立支援」を行う場が急激に求められつつある。つまり〈教育〉の論理が、従来の制度的範囲を超えて要請されている。既存の学校教育で行われる一般教育・職業教育も、貧困・格差の削減という観点から評価されるようになっている。
この変化に伴い、福祉国家も直接給付型の社会保障から、人的資本形成を中心に据えたものへと変貌を遂げてきている。世界中で見られるこのトレンドを社会保障の〈教育〉化と呼んでもいいだろう。

しかし、社会保障機能を〈教育〉に委ねていいのだろうか?換言すれば、教育は本当に(本当だとしたらいかなる形で)平等や社会的包摂に結びついているのだろうか?
例えば教育は、たとえ属性の効果を完全に除去できたとしても、業績主義が徹底するだけで、人を序列し、配分していくことには変わらない。再分配率を変えたり、ベーシックインカムなどの普遍主義的な給付によって社会権を保障する方が、格差・貧困問題の解消に直接寄与するという主張もある。加えて人間の安全保障を包括的に考えるなら「恐怖からの自由」という論点も必要だが、教育社会学においてこれまでほとんど扱えてこなかった。

以上を踏まえた上で、教育に期待される社会保障機能の意義と限界について、経験的研究と規範理論の両方の知見を踏まえながら、多角的に考えていきたい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
23-212-02
GED-IE6201S1
市民社会・国家・教育
仁平 典宏
S1
月曜3限、月曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教育学研究科
授業計画
第1回:イントロダクション 第2回:論文の検討とディスカッション(山口毅2020「生存保障への教育社会学的アプローチの失敗」『教育社会学研究』106 巻) 第3回~第14回:論文購読に基づくディスカッション
授業の方法
原則として、毎回指定された文献や論文を購読した上で、当日は報告者が論点を提示し、それに基づいてディスカッションを行う。
成績評価方法
平常点。具体的には、授業への出席・報告・議論への参加を重視する。(無断欠席は1回ごとに1段階評価が下がる)
教科書
初回の授業では、山口毅2020「生存保障への教育社会学的アプローチの失敗」『教育社会学研究』106 巻の論文を検討する。 https://www.jstage.jst.go.jp/***** もし可能であれば、簡単な感想やコメントをまとめた購読メモを作っておくこと。(形式任意) 2週目以降の授業で用いる論文については、初回に提示する。
参考書
倉石一郎2021『教育福祉の社会学:〈包摂と排除〉を超えるメタ理論』明石書店 教育文化総合研究所2017『貧困と子ども・学力研究委員会報告書』 佐々木宏・鳥山まどか編2019『教える・学ぶ――教育に何ができるか』明石書店 Ivar Lodemel, Amilcar Moreira, 2014, Activation or Workfare?: Governance and the Neo-Liberal Convergence, Oxford University Press. Iversen, Torben, 2005, Capitalism, Democracy, and Welfare, Cambridge University Press. アマルティア・セン2006(訳書)『人間の安全保障』集英社 森悠一郎2019『関係の対等性と平等』弘文堂 アイリス・マリオン・ヤング2014(訳書)『正義への責任』岩波書店
履修上の注意
テーマに関心があれば専門領域は問わない。 毎回指定された論文を事前に全員が読んだ上で、当日は報告者が論点を提示し、全体でディスカッションを行う。つまり事前の文献の読解と論点の検討は、報告者以外も必須となる。
その他
初回の授業では、山口毅2020「生存保障への教育社会学的アプローチの失敗」『教育社会学研究』106 巻の論文を検討する。 https://www.jstage.jst.go.jp/***** もし可能であれば、簡単な感想やコメントをまとめた購読メモを作っておくこと。(形式任意) Googleドライブのリンクは下記のとおりです https://drive.google.com/*****