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最終更新日:2024年3月15日

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市民社会・国家・教育

教育社会学では、これまで教育システムを通じた格差・貧困・排除の生成メカニズムに関する知見を蓄積してきた。
しかし、そのメカニズムが概ね明らかにされた後も、対象や方法の微細な差異を「オリジナリティ」と称して論文生成のよすがにし続けることは――それ自体学問の発達に不可欠なプロセスでありつつ――学問的惰性という側面もある。

他方で、長らく等閑視されてきたのは、そのような教育社会学的知が実効化しないメカニズムであった。つまり「原因も政策的な解決方法も共有されつつある。にもかかわらず、なぜ社会/個人は再分配やマイノリティの包摂を、選択・選好しないのか?」という問いである。

この問いは、ある部分で、シティズンシップ教育や政治的公共性を巡る議論とも重なる。
しかし、社会学の観点からシティズンシップ教育を捉える上で重要なことは、思弁的な議論に耽溺したり一部の事例を称揚することではなく、経験的な地平でその存立構造や機能を明らかにすることである。

実際に後期近代社会では、多くの場合、政治的公共圏が無前提に成立することも、「市民主体なるもの」が素朴に成立することもなく、政治的コミュニケーションは多様な形で阻害・忌避・抑制されている。
また、他者への贈与や連帯を呼びかける声を、「偽善」として貶価・否認するコミュニケーションも、我々の社会や身体に深く根ざしているだろう。

以上の点を踏まえた上で、本授業では、理念的な「市民」的コミュニケーションが機能不全に陥るメカニズムについて、関連諸学の力も借りながら検討していきたい。同時に、これまた惰性によって問われなくなって久しい教育(社会)学の規範論的足場についても再検討したい。

以上を通じて、新しい「シティズンシップ教育の社会学」を起動させる方向性を探ることが、本授業の課題となる。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
23-212-02
GED-IE6201S1
市民社会・国家・教育
仁平 典宏
A2
月曜3限、月曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教育学研究科
授業計画
第1回︓イントロダクション 第2回〜第13回︓テキスト購読に基づくディスカッション 第14回︓総括討論とまとめ
授業の方法
毎回指定された文献や論文を事前に購読する。その上で文献種別ごとに次の進め方をする。 英語文献:担当者がレジュメを作成し報告・論点提示のあと、ディスカッションを行う。 日本語文献:原則として、各自が簡単な購読メモを準備し、それに基づいてディスカッションを行う。
成績評価方法
授業への出席・議論への参加を重視する。 具体的には、担当回のレジュメ作成、議論への参加を3:7の比率で評価する。
教科書
各回の授業で用いるテキストを初回に提示する。
参考書
Zerubavel, Eviatar, 2006, The Elephant in the Room: Silence and Denial in Everyday Life, Oxford University Press. Runciman, David, 2010, Political Hypocrisy: The Mask of Power, from Hobbes to Orwell and Beyond 鈴木健2013『なめらかな社会とその敵』勁草書房 ピーター・シンガー2018(訳書)『飢えと豊かさと道徳』勁草書房 バーナード・クリック2011(訳書)『シティズンシップ教育論―政治哲学と市民』法政大学出版局 小玉重夫2016『教育政治学を拓く―18歳選挙権の時代を見すえて』勁草書房 広田照幸2015『教育は何をなすべきか――能力・職業・市民』岩波書店 ペーター・スローターダイク1996『シニカル理性批判』ミネルヴァ書房
履修上の注意
テーマに関心があれば専門領域も学問領域も問わない。