大学院
HOME 大学院 市民社会・国家・教育Ⅰ
過去(2019年度)の授業の情報です
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2024年4月22日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

市民社会・国家・教育Ⅰ

これまで教育社会学は、教育と職業の関係について主に分析を蓄積してきた。
だが、近年明らかになってきたことは、日本社会が賃労働だけではなく、膨大なアンペイドワーク(不払い労働)に依存してきた社会だったということである。

人々は言説を介して適切に自己統治/主体形成し、企業、学校、家族、コミュニティなどで賃労働以外にも様々な労働・活動を提供してきた。それはマクロなレベルにおいて、社会保障の支出抑制や労働コスト抑制に寄与し、「含み資産」として経済・社会発展にプラスの影響を与えてきたと指摘される。
しかしそれが制度疲労を起こし、機能不全を起こしつつある。「やりがい搾取」や「ブラック労働」が問題化されてきたのもこの文脈である。

日本社会のこの体系的側面は、まだ十分に明らかにされていない。また、この構造に対して、規律化や主体形成に関わる〈教育〉の制度や言説が果たしてきた役割は大きいが、その解明も不十分である。だが、I・イリイチが子どもの学校での学習を資本主義的蓄積に寄与する「シャドウ・ワーク」と分析したのを嚆矢として、統治性分析、感情労働論、time use研究、ケア論、ジェンダー秩序分析、日本型集団主義/組織論、日本型生活保障システム論など、教育とアンペイドワークの関係を捉える上で有効な理論枠組も揃いつつある。
また経験的研究の中でも、「自己実現」重視の教育言説・進路指導実践や自己啓発言説、ある種のシティズンシップ教育言説などが、いかに「搾取」のメカニズムに接続しうるかに関する知見が蓄積されてきた。

以上を踏まえて、本授業では、家庭、職場、学校、コミュニティを通じて、アンペイドワークがいかに編成されていたのか、その中で〈教育〉がいかなる役割を果たしてきたのかについて理論的に接近する回路を見出し、教育社会学/教育学の新たなテーマ開拓にもつなげていくことを目的とする。
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
23-212-02
GED-IE6201S1
市民社会・国家・教育Ⅰ
仁平 典宏
S1
月曜3限、月曜4限
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教育学研究科
授業計画
第1回:イントロダクション 第2回~第14回:テキスト購読に基づくディスカッション 第15回:総括討論とまとめ
授業の方法
毎回指定された文献や論文を購読し、レジュメで内容を確認した上で、ディスカッションを行う。
成績評価方法
授業への出席・議論への参加を重視する。 具体的には、担当回のレジュメ作成、議論への参加を3:7の比率で評価する。
教科書
各回の授業で用いるテキストを初回に提示する。
参考書
イヴァン・イリイチ(訳書)2006『シャドウ・ワーク――生活のあり方を問う』岩波書店 仁平典宏・山下淳子編2011『労働再審〈5〉ケア・協働・アンペイドワーク――揺らぐ労働の輪郭』大月書店 牧野智和2012『自己啓発の時代――「自己」の文化社会学的探究』勁草書房 Livingstone, D.W., 2010, Lifelong Learning in Paid and Unpaid Work: Survey and Case Study Findings. Routledge Lambert, Craig, 2016, Shadow Work: The Unpaid, Unseen Jobs That Fill Your Day. Counterpoint Hirway, Indira, 2017, Mainstreaming Unpaid Work: Time-Use Data in Developing Policies. Oxford Univ Press
履修上の注意
テーマに関心があれば専門領域は問わない。
その他
特になし。