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最終更新日:2026年4月20日

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あたらしい史料学の展開

歴史を考察するうえで基盤となる史料をいかに扱い、いかに共有してゆくのか、その環境は大いに変化しつつある。史料を共有するもっとも基本的な媒体となってきた、書籍としての史料集も今後長期にわたってその形態や質を維持できるのか判然としない状況にある。代わってデジタルアーカイブやデータベース、大規模言語モデル(LLM)といった、ネットワークを介した情報源がよりアクセシビリティの高い媒体となりつつある。近代的な史料学の確立から凡そ130年を経て、今日我々は大きな転回点に立っていると言ってよい。伴って史料調査をめぐる手法・コンセプトも大きく変化しつつある。記された文字を正確に読み解くという根本的な課題に加えて、文化財保存科学の進展をふまえた史料組成の分析や、伝来過程における史料体裁の変更や保管環境の検討など、多岐にわたる情報の可視化・共有化が求められている。こうした調査過程から情報共有手法に至る一連の変化を踏まえることで、史料学の新たな方向性を考えてみたい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
21265032
GHS-CR6A01L1
あたらしい史料学の展開
井上 聡
S1 S2
金曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
人文社会系研究科
授業計画
1)近代史学の黎明~修史事業~ 明治維新とともに国家的な修史事業が開始されます。近世の成果を継承しつつ、近代的な史学がどのような過程で生み出されてきたのかを概観します。 2)近代史学の確立と史料集編纂事業① 修史事業は紆余曲折をへて、大学という場における史料集編纂事業へと展開してゆきます。その経緯と史料集編纂に与えられたミッションの詳細を検討します。 3)近代史学の確立と史料集編纂事業② 実証主義的な史料集編纂事業は、大学における史学の生成・発展とも密接な関係を有していました。相互がどのような関係のもとに成長していったのかを概観します。 4)史料調査の展開と複製作成 史料集編纂事業の本格化のなかで、全国的な調査事業が展開されてゆきます。その具体的なあり方と、伴って作成された膨大な複製史料の存在に注目してゆきます。 5)史料学と古文書学 広範な調査が展開するなかで、何を歴史的な史料と見るか、またそれをいかに整理・分類するかといった視点から史料学が展開し、特に古文書については、その機能・形式をめぐって精緻な分析が進展しました。こうした基礎的研究の展開について概観します。 6)史料のひろがり 古文書・古記録・典籍といった紙に文字を書き付けたものに限定して史料をとらえてきましたが、研究の深化や新たな気づきを通じて、絵画史料・金石文ほか、その範疇はひろがりを見せています。歴史を知る素材としての史料を、どのように捉えてゆくべきなのか、改めて検討を行います。 7)史料調査技法の進化と生成データ管理 デジタル調査の導入や分析手法の高度化を通じて、史料調査の方法論は大きく変化を遂げています。伴って生成される情報も多様化し、合理的に管理するための方法論が求められています。こうした状況を具体的に紹介し、現時点における成果と課題を提示します。 8)デジタル史料画像の導入とデジタルアーカイブの構築 史料複製の手法は、フィルム撮影からデジタル画像データへと進化することで、史料目録はデジタルアーカイブへと直結する形に成長しました。こうしたシステムを概観するとともに、それらの維持・運営にまつわる課題を検討します。 9)ネットワーク環境と歴史系データベース 90年代末から一挙に拡大した、ネット―ワークを介する学術資源の共有化は、史料の世界にも大きな影響をもたらしました。ローカルに情報を蓄積していたシステムは、WEBとの接続を通じて汎用的なデータベースに成長してゆきました。こうした軌跡を踏まえて、今日的な課題を析出します。 10)フルテキストデータベースの展開と構造化 歴史知識情報を集約したデータベースは、次第に史料総体をフルテキスト化したものへと発展します。さらにそのテキスト情報は、単に文字コードを羅列したものから、構造化されて機械可読なものへと高度化しつつあります。こうした現状と直面する課題について、検討を深めます。 11)テキスト構造化と史料集の位相 高度に構造化された史料テキストが登場することで、機械を用いた高度な応答が可能になると予想されます。その際に、従来の史料集には、どのような存在意義が与えられるのか、さまざまな可能性をふまえて議論を進めます。 12)大規模言語モデルの展開と歴史学 構造化された史料テキスト郡が膨大に蓄積され、各種の歴史系データベースとも連結されることで、文献史料の大規模言語モデルが生成されることになります。AIによる応答や立論が予想される環境のなかで、歴史学や史料学には何が求められているのかを検討してゆきます。 13)社会の変化と史料学 技術的な環境変化のみならず、少子高齢化の深刻化や、地方における過疎化の進行は、史料を伝えてきた社会的集団の変質や消滅を意味します。いかに史料を伝え残すかという新たな問いに、史料学が果たせる役割が何かを考えてゆきます。 14)研究拠点と地域の協業による史料保全・管理スキームの提示 縮小化する社会や、脆弱化する個々の大学を有機的につなぐことで、伝来史料をいかに保全・活用してゆくのかが問われています。そうした課題に対応する具体的な方法論を探ります。 15)まとめ 明治から令和に至る長い時間の変化・推移を踏まえて、改めて史料学の将来を展望します。
授業の方法
対面で講義を行い、課題について討論する。
成績評価方法
授業への参加状況や発言など(40%)、レポート(60%)
履修上の注意
自身が専攻する分野における史資料論の現状を認識しておくこと、また調査手法の現状と課題を把握しておくことが望ましい。