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最終更新日:2026年4月20日
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19世紀ロシア文学読解(1)
ドストエフスキーにおける罪と病(1)
ドストエフスキー『罪と罰』(1866)はまずもって哲学思想小説とされ、そこで描かれる殺人は、理性的に組み立てられた超人思想の帰結だとされる。だが殺人を正当化する抽象的な思想は、小説テクストにおいてそれ自体として独立して語られるものではない。殺人という「逸脱」行動には、心身の病や環境といった生理学的・医学的・社会経済的な動機づけもなされている。かつて宗教的・道徳的罪や悪霊の憑依とされた逸脱行動は、近代になり体系的に、法的対象(違法行為)、つづいて医療対象(病)として理解されるようになった。アルコール中毒、売春、動物虐待、窃盗、殺人などの逸脱行動に満ちたドストエフスキーの小説は、こうした合理的理解や決定論・実証主義への言説転換を反映しつつも、同時に、「悪」をそうした理解に還元することへの反発や不可能性を組み込んでいるのであり、思想や意志の問題も、そのような文脈のなかで現れる。
本演習では、近年のドストエフスキー研究等を参照し、熱病、偏執狂、精神錯乱、疫病といった病の表現に着目しながら、『罪と罰』を医学的・法的・宗教的言説の境界上にあるものとして読んでいきたい。
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