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最終更新日:2026年10月16日
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フランス現代文学研究(1)
ミシェル・レリス『ビフュール(抹消)』を読む
ミシェル・レリスの自伝的連作『ゲームの規則』は、1940年頃から約36年をかけて書き継がれた、「生きること」と切り離せない書物である。その第一巻『ビフュール(抹消)』は、この巨大な仕事の出発点にあたる。本巻では、とりわけ言葉の問題が中心となり、幼年期の思い出や記憶の断片、語へのこだわりが、「言葉をめぐる自伝」として編み上げられていく。冒頭の «…reusement !» の逸話が示すように、自分だけのものだと思っていた言葉が、ある瞬間に社会の共有物になってしまう経験は、レリスにとって決定的な衝撃だった。彼はこの違和感を抱えたまま、シュルレアリスムや民族学に近づくが、客観的で中立的な言語の世界に安住することはできない。アフリカから帰国した後、学問としての民族学と、自分自身を扱う自伝的執筆は切り分けられるが、『ビフュール』ではその方法を反転させ、自分を対象とする「自己民族学」としてテクストが組み立てられる。執筆の素材となるのは、カードに書き留められた出来事や言葉、逸話の断片であり、書くことは、それらを結びつけ、連想の網を張りめぐらせていく作業である。ミニアチュールや「最小のもの」への偏愛、言葉を徹底して問い直す姿勢は、現実を想像力によってとらえ直そうとするレリスの詩学を支えている。同時にこの方法は、記憶や欲望の核心に正面から向き合うことを先延ばしにしてしまう危うさもはらむ。『ビフュール』は、欠けているものを探し続ける欲望に突き動かされながら、断片をつなぎ合わせて自己を描くという試みを通して、自伝というジャンルそのものを問い直す作品である。今回の授業では、「ペルセポネー」の章を中心に、以上のようなレリスの方法や詩学が確立していく過程を検討する。
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