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最終更新日:2025年4月21日
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19世紀ロシア文学読解(1)
ドストエフスキーにおけるゴシック(1)
ドストエフスキーは、ロシアの「遅れた」近代化が花開いた時代の作家だが、彼の多くのテクストは、そうした近代化・西欧化に対する反応・反動として読まれている。たとえば彼の宗教性は、合理主義・個人主義・実証科学といった近代的価値観の浸透に対する反動の最たるものだといえる。
そうした反動性はしかし、ロシアだけに特有のものではない。19世紀ロシアにとりもっとも「先進的」な近代国家であったイギリスも、自らの近代化に対する反動を抱え、それ独自の文化形態ーーゴシック・ジャンルーーを生みだした。
そのような西欧文化における反動としてのゴシックは、あらためてロシアに輸入され、ドストエフスキーにおいて独自の成長をとげる。ドストエフスキー作品のもつ「地下室的な暗さ」は、まさに合理的・啓蒙的な明るさの裏面としてのゴシック・モードだとみなすことができよう。
しかし他方で職業作家ドストエフスキーは、作品を販売して暮らしを立てねばならない、という近代の市場原理の要請に応えるために、戦略的にゴシックのナラティヴ(ホラーやサスペンス)を選んだともいわれる。
このような近代的要請とそれへの反動が、どのようにゴシックという形でテクストに具現しているのかを考えるため、本演習では、研究書を参照しながら、特にゴシック性が色濃く現れていると言われる『白痴』を原文で読んでいく。
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