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最終更新日:2025年4月21日

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古代・中世仏教絵画史研究

奈良古代中世仏教絵画史論
古代より日本仏教文化の中心地だった奈良では、寺院建築の装飾や仏教法会の本尊となる絵画が各時代にわたって多様に描き継がれてきた。特に日本仏教の礎が築かれる奈良時代に生み出された絵画作品の数々は、京に都が移った平安時代以降も、南都と呼ばれた奈良の地において仏画制作の規範とされていく。また中世を通じて東大寺や興福寺に所属した南都絵所と呼ばれる仏画工房に所属した絵仏師たちは、古代からの伝統を継承した独自の図像や様式をもつ仏教絵画を生み出し続けた。さらに寺社の創建や霊験などの由緒を説く縁起絵巻や、その教学発展に寄与した祖師の伝記を描く祖師絵伝もや、にまつられる仏像の彩色についても絵仏師が中心的な役割を果たしていたことが知られている。本講では、こうした奈良の地に視点を据えて古代から中世に至る仏画作品の展開を概観し、その絵画技法や図像、絵画工房、安置儀礼空間の問題などについて述べていく。以上の授業を通じて最終的に、①絵画技法の継承と伝播、②図像の受容と変容、③絵仏師の工房制作、④礼拝空間で担う機能の問題など、日本仏教絵画史研究の中心課題を理解することを学修の到達目標とする。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
21250308
GHS-GC601LC1
古代・中世仏教絵画史研究
谷口 耕生
S2
集中
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
人文社会系研究科
授業計画
全13コマの授業計画を以下のとおり。 1.ガイダンス  古代仏教絵画をの最高傑作である法隆寺金堂壁画について、最新の光学的調査の成果も交えながらその絵画技法や図像の問題を明らかにしながら、 日本の古代中世絵画史研究において奈良の仏教絵画が担う重要な位置づけを確認する。 2.奈良時代の儀礼と仏画  薬師寺吉祥天像の考察を通じて、奈良時代の仏画が仏教儀礼の中でどのように礼拝されたかを明らかにする。 3.奈良時代の仏画と図像  法華堂根本曼荼羅の考察を通じて、奈良時代の仏画の図像がどのように形成・伝播したかを明らかにする。 4. 南都の平安仏画と宋代図像  法隆寺星曼荼羅の考察を通じて、院政期の奈良の仏画に宋代図像の影響が認められることを指摘する。 5. 南都の平安仏画と宋代儀礼  達磨寺仏涅槃図の考察を通じて、院政期の奈良の仏画に宋からもたらされた涅槃儀礼からの影響が認められることを指摘する。 6. 南都仏画と天平復古  東大寺倶舎曼荼羅の分析を通じて、南都の教学復興期において奈良時代仏画の図像を復古的に用いた仏画が積極的に描かれたことの意義を明らかにする。 7. 高山寺の密教画と華厳思想  京都・高山寺の仏眼仏母像の考察を通じて、そこに東大寺で華厳教学び高山寺を創建した明恵房高弁の密教事相研究と華厳思想が色濃く投影されていることを明らかにする。 8. 南都の釈迦信仰と戒律復興  清凉寺釈迦如来立像厨子扉絵の考察を通じて、その制作背景に解脱房貞慶・明恵房高弁の釈迦信仰と戒律思想のがあることを明らかにする。 9. 南都の文殊信仰と浄土図  海住山寺阿弥陀浄土曼荼羅・興聖寺兜率天曼荼羅の考察を通じて、その図像や制作背景に鎌倉時代初期における南都復興の立役者である解脱房貞慶の文殊信仰がとうえいされていることを明らかにする。 10. 春日宮曼荼羅の成立と展開①  春日大社の社頭景観を描く春日宮曼荼羅が、平安時代末期に成立した契機と、南都の絵仏師によって多様に描かれた背景を明らかにする。 11. 春日宮曼荼羅の成立と展開②  春日大社の社頭景観を描く春日宮曼荼羅が、平安時代末期に成立した契機と、南都の絵仏師によって多様に描かれた背景を明らかにする。 12. 南都の寺院縁起としての信貴山縁起絵巻  絵巻の最高傑作に挙げられる信貴山縁起絵巻が、南都信貴山本尊の霊験を説く日本最古の縁起絵巻であることを確認し、その制作に後白河院が関与したことを明らかにする。 13. 玄奘三蔵絵と中世南都の仏教世界観  玄奘のインド求法の旅を描いた玄奘三蔵絵、玄奘の旅行記である『大唐西域記』をもとに描かれた法隆寺五天竺図の分析を通じて、画面に投影された中世南都の仏教世界観を読み解く。
授業の方法
講義レジュメを配付し、代表的な作品、時代背景などを解説する。関連作品はプロジェクターによって提示する。
成績評価方法
授業参加状況と小課題:6割 レポート:4割
教科書
有賀祥隆『仏画の鑑賞基礎知識』(至文堂、1991年)。
参考書
亀田孜『日本仏教美術史敍説』(学芸書林、1970年)。 『日本美術全集③ 東大寺・正倉院と興福寺(奈良時代Ⅱ)』(小学館、2013年)。 『日本美術全集⑤ 王朝絵巻と貴族のいとなみ(平安時代Ⅱ)』(小学館、2014年)。 『日本美術全集⑧ 中世絵巻と肖像画(鎌倉・南北朝時代Ⅱ)』(小学館、2015年)。 谷口耕生「達磨寺所蔵仏涅槃図考」『釈迦信仰と美術 作品解釈の新視点』思文閣出版 2023 谷口耕生「奈良国立博物館蔵「東大寺戒壇院扉絵図」について」『鹿園雜集』第24号 2022 谷口耕生「五代・北宋期における熾盛光道場本尊図像の形成と伝播」『アジア仏教美術論集東アジアⅢ』中央公論美術出版 2021 谷口耕生「『玄奘三蔵絵』と中世南都の仏教世界観」『玄奘三蔵 新たなる玄奘像をもとめて』勉誠出版 2021 谷口耕生「慈母のまなざしに抱かれた修練の日々―仏眼仏母像―」『高山寺の美術 明恵上人と鳥獣戯画ゆかりの寺』吉川弘文館 2020 谷口耕生「「信貴山縁起絵巻」研究序説」『信貴山朝護孫子寺蔵 国宝 信貴山縁起絵巻 調査研究報告書-研究・資料編』奈良国立博物館・東京文化財研究所 2020 谷口耕生「法華堂根本曼荼羅再考-天竺之真本としての霊山変相図」『古代文学と隣接諸学6 古代寺院の芸術世界』竹林舎 2019 谷口耕生「清凉寺釈迦如来立像旧厨子扉絵考―金光明諸天図の一遺例―」『仏教美術論集5 機能論―つくる・つかう・つたえる』竹林舎 2014 谷口耕生「倶舎曼荼羅と天平復古」(単著)、『仏教美術論集1 様式論―スタイルとモードの分析』竹林舎 2012 谷口耕生「南市町自治会所蔵春日宮曼荼羅試論」『論集・東洋日本美術史と現場―見つめる・守る・伝える』竹林舎 2012
履修上の注意
博物館・美術館・社寺などで実際に仏教絵画作品を見てもらいたい。