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最終更新日:2025年4月21日
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猫の比較文学
「猫の比較文学」
Japanese Cats in the Garden of World Literature (日本文学の庭に棲む猫たち)
本講義はダリン・テネフ(Darin Tenev)先生(ソフィア大学准教授)をゲスト講師にお招きして行います。
(テネフ先生の紹介については本項目末尾を参照してください。)
ネコという不思議な存在は日本文学において独特な位置を占めている。夏目漱石の『吾輩は猫である』から村上春樹の『1Q84』まで、近現代文学には猫の形象が不可欠であっただけではなく、その形象の果たしてきた役割は常にヒトの有限性かつ諸限界を問題視することで、虚構において人間世界を再定義することであったといえる。見えるものと見えないものの境界、死ぬことと死なないことの境界、性区別の境界、飼い馴らされたものと飼い馴らせないものの境界などを横断する存在として作品に登場するとき、猫はもはや単なる動物ではなく、文学的フィギュールに生成変化する。そして、猫のフィギュールは必ずいくつかのモチーフと絡み合い、その一定の諸モチーフと一緒にコンフィギュレーションを形成する。女性との比喩的関係、死との関係、まなざしとの関係などがそのコンフィギュレーションの一部分である。
この講義では、猫が関与しているコンフィギュレーションをたどりながら、日本近現代文学における猫の謎を解き明かす。そのために、西洋文学における猫と比較し、日本古典文学に現れる猫にさかのぼり、猫のブームや猫に対する虐待といった社会的現象を考察しつつ、具体的な作品を取り上げて、分析する。デリダの猫論を出発点にして、方法論として、ナラトロジー、虚構理論、アニマルスタディーズを使用する。
ゲスト講師紹介 ダリン・テネフ(Darin Tenev)
ソフィア大学スラヴ学部文学理論学科准教授(ブルガリア)。専門は文学理論、比較文学。日本語で読める論文:「猫、眼差し、そして死」(南谷奉良訳、首都大学東京人文学研究科『人文学報』No.511・特集:ジャック・デリダ没後10年、2015年6月)、「世界文学のエピジェネティクス」(野網摩利子編『世界文学と日本近代文学』東京大学出版会、2019年)など。著書(ブルガリア語):『虚構とイメージ』(2012年)、『逸脱――ジャック・デリダについて』(2013年)。
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