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最終更新日:2024年10月18日
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病いの語りをめぐる倫理
病いの語りをめぐる倫理
人間は、病いとともに生きていくことを余儀なくされたとき、これまで自明視していた人生の意味を深く問い直すようになる。このような意味の問い直しの過程で、当事者が語るということや他者がそれを聞き届けるということは、極めて重要な役割をもっている。しかしながら、ここで注意すべきは、病いの苦しみを語ることやそれを聞き届けることが、多くの場合、困難に満ちたものになるという点である。それゆえ、その困難さを念頭に置きつつ、病いをめぐる体験とその意味について考察することが求められる。
そこで本演習では、病いに関する物語論の古典であるアーサー・フランクの『傷ついた物語の語り手――身体・病い・倫理』=Arthur W. Frank, The Wounded Storyteller: Body, illness, and Ethicsを講読する(訳本でも可)ことで、病いの語りがどのような複雑な意味と効果をもつのかをその社会的含意も含めて考えていく。より具体的には、病いの語りの三類型である回復の語り・混沌の語り・探究の語りがどのようなものであるのか、また相互にどのような関係にあるのかを考察する。それと同時に、コミュニケーション・身体・脆さ(vulnerability)・傾聴・証言・苦しみ・多声性といった臨床倫理における重要概念が、どのように捉えられているのかを検討する。とりわけ、ポジティヴな回復の語りがはらむネガティヴな性格や、私たちの身体や生産性重視の社会がはらむ閉鎖的・排他的な側面等を批判的に見ていく。そのことを通して、病いの複雑な体験に根ざした倫理や責任のあり方、またコミュニケーションのあり方を根本的に考察する。
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