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最終更新日:2023年10月20日

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歴史実践における口承/環境/叙述

書くことをめぐる葛藤
実証主義歴史学においては、文字で書かれた文献資料は不可欠の前提であり、考古学や民俗学など過去を扱う隣接諸科学との境界をもなしている。そうして伝統的な進歩史観においては、文字は農耕や都市などと並び、常に文明の指標のひとつとして数えられている。しかし、早く柳田国男が民俗学創出に際して批判したように、文字筆記には否応なく、権力と階層差の問題が内在している。また、かつてレヴィ=ストロースが指摘し、ピエール・クラストルやジェームズ・C・スコットが立証してきたように、民族社会には文字忌避の心性が根強く広がっている。しかし、文字を拒否した、あるいは文字を喪失したとの伝承を持つ少数民族も、決して歴史の概念を持っていないわけではない。当然のことだが、口承の複雑な話型を駆使して過去を語る人びと、数百年にわたる系譜を正確に伝える人びとにとっては、文字は歴史実践の不可欠の要素ではありえないのである。さらに、保苅実が鋭く捉えたとおり、口頭による歴史語りが文字記述と比較して不正確であり、信頼に値しないとの判断は、西欧近代科学を至上の価値基準とする、偏ったものの見方に過ぎない。本講義では、これまで歴史学が文字に与えてきた特権性を相対化しつつ、日本を含む東部ユーラシアの古代、少数民族の社会、あるいは仏教や道教の思想世界を往還しながら、ヒトの歴史実践における文字の意義、〈文明〉なるものにおける文字の功罪について考えてゆく。具体的な事例には、ヒト至上主義を批判し、ジェンダー・フリーな社会を実現してゆくため、アンスロポセンや性差別に関する史資料を多くとりあげる予定である。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
21230076
GHS-XX6A01L1
歴史実践における口承/環境/叙述
北條 勝貴
S1 S2
月曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
人文社会系研究科
授業計画
初回は、ガイダンスとイントロダクションを行う。2〜3回目は「古代社会・民族社会と文字忌避」と題し、世界史一般や先行研究で指摘されてきた、文字忌避の傾向について概説する。4〜6回目はその各論で、中国西南少数民族のヤオ族、北方狩猟民に連なるアイヌ民族の文字忌避を具体例に、彼らの文字に対する考え方・接し方、その歴史的意味を探ってゆく。7〜9回目は「文字記述への抵抗としての瞑想」と題して仏教を採りあげ、原始仏教における経典出現前後の変質(何を得て何を失ったのか?)、中国仏教における瞑想=神秘体験と文字記述との葛藤について考える。10〜12回目は「中国女書の世界」と題し、中国湖南省の漢人/ヤオ族混住地域で伝承されてきた女性だけの文字=「女書」の社会的な意味を、日本列島の漢字・かな文化との比較も通して論じてゆく。13回目は講義全体の流れをまとめ、文明における文字記述の功罪、文字記述を文明の要件とする進歩史観について、再考を加える。
授業の方法
対面式で行うが、配付資料のファイル(もしくはそれらがダウンロード可能なURL)は、毎回月曜の正午までに ITC-LMS にアップする。受講生はそれを端末にダウンロードするなり、プリントアウトするなりして手許に用意し、講義を受けたうえで課題に答えること(毎回500字程度、リアクション)。フィードバックには、 ITC-LMS も活用するが、重要なものについては授業内で解説し、共有する。 ※ 初回の授業は、教室における混雑が予想されるため、オンライン授業で行う。Zoom の ID *****事前に告知する。
成績評価方法
提出された課題(リアクション)の内容(40%)、学期末のレポート(60%)で評価する。テーマについては、授業内で説明する。評価の基準は以下のとおり。 a)問題意識の新鮮さ、オリジナリティ b)講義の理解度 c)考察の完成度(データの収集力・分析力、論理的思考能力、構想力など) d)プレゼンテーションの完成度(文章、構成、図表等の工夫など)
教科書
とくに定めない。必要な資料は毎回配付する。
参考書
・菅豊・北條勝貴編『パブリック・ヒストリー入門:開かれた歴史学への挑戦』勉誠出版、2019年 ・方法論懇話会編『療法としての歴史〈知〉:いまを診る』森話社、2020年 ・奥野克巳・近藤祉秋他編『モア・ザン・ヒューマン─マルチスピーシーズ人類学と環境人文学─』以文社、2021年 ・染谷智幸、金文京、小峯和明、ハルオ・シラネ編『東アジア文化講座』全4巻、文学通信、2021年
履修上の注意
上記「参考書」欄では、全授業を通して参照できる、パブリック・ヒストリーその他の書籍を掲げた。これらを関心のあるものから通読し、使用する概念・方法などについて、慣れておくことが望ましい。また、各単元の最初には、そのテーマに関する基礎文献を掲げるので、やはり批判的に読み込み、講義の予習・復習に役立てること。学期末のレポートでは、全授業を通じた問いを投げかける(それが何なのかは、講義のなかで次第に明らかになる)ので、自分がどう考えるか、それをある程度実証するためにはいかなる史資料の収集・読解・処理が必要か、だんだんと準備をしておく必要がある。