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最終更新日:2024年10月18日

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食と場所の環境倫理

ポスト人新世時代における自然らしさとは何か、人間的であることとは何かを食と場所に関する議論を通じて考察する。
食とは、自然が生み出したものを人間の身体に取り入れる行為であり、身体という場は人と自然が関わる場でもある。また食は、食料を得て加工し食卓に並べるまでの過程も、食べるという行為自体も、きわめて文化的かつ社会的行為である。しかも、グローバルに広がる食の生産・消費・廃棄のシステムに支えられた現代の食において、わたしたちは見知らぬ他者が生きる場と生産・消費・廃棄のシステムを介してつながっている。本講義では、大気海洋システムまでも大きく人間活動に影響を受け、人為起源の生物系群に地球が覆われた人新世時代において、食システムがいかなる変容を求められ、実際に変容しつつあるかを追いかける。そして、よい食とは何かについて、おいしい、健康である、倫理的である、持続可能である、公正である、真正である、など「よさ」を表現する概念と実践をたどりながら考える。それは同時にわたしたちが生きる場所とは何かについて考えることでもある。本講義は二つの目標を設定する。一つは、現在の食システムを理解した上で、よい食とは何かを評価する軸をみずから見いだし、実践する方法を探求することができることである。もう一つは、人新世時代において自然らしさ、人間的であるとは何かについて深く考察し、具体的な社会のデザインについて想像する力を得ることである。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
21230074
GHS-XX6A01L1
食と場所の環境倫理
福永 真弓
A1 A2
火曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
人文社会系研究科
授業計画
食の倫理:ほんものと「らしさ」のポリティクス 1. わたしたちは食べなければならない?    食べること=消費すること?    食べることの/周りのメタファー    食べることがもつ/もたらす交差性 2. エシカルな:倫理の複数性    「べき」の氾濫: エシカル・エシカル!    ふわっと倫理の功罪    非対称的なものたちへの倫理    共鳴する身体の自由さと不自由さ 3 . おいしさ:隠蔽と共感     おいしさは作られる     おいしさはスペクタクル     隠蔽される階層性と排除の力学     おいしさのアナーキー:地べたの共感覚 4.健康である    ポストヒューマン的現実と健康    健康をデザインする食:衛生、労働、美容、個性    すべりこむ優生学と優境学    身体という鉄の檻と生資本    開かれっぱなしの身体と「普通」の再編 5.持続可能な    基本的な問い:何を持続するのか    持続可能性と生資本権力の拡大    地球の限界とネオ・テラフォーミング    地球Bに生きる:持続されるのは誰の世界? 7.ローカルな:オーガニックを超えて    ローカルをめざせ!    商品化されるオーガニックを超えて    新しい世界の指標:再生可能性とローカリティ    身の丈の世界とサブシステンス・パースペクティブ 8.ほんものである    求められるほんもの:ほんもの幻想ゲーム    複製という名のほんもの    消費主義症候群で生きるホンモノのわたし    エキゾチック・オーセンティック    複数のほんものを生きる身体 9.人間以外の生きものへの配慮    肉食の臨界:殺して食べる/つくって食べる    ビーガニズム:祝祭化した政治アリーナ    野生をつくって食らう    家畜をつくって食らう    自己家畜化する人間と動物性の再編 10. 公正である:見知らぬ、遠いものたちとのあいだ    食をめぐる不正義:新植民地主義化への抗い    気候正義と食の正義    サバイバル・ロジックと身の丈の公正さ    わたしたちが「在る」ために必要な他者 11. 公正である:未来のものたち/不在の存在たちとのあいだ    未来世代への倫理    地球Bにおける腐敗と分解    地球Bの生きもの・生命なき肉たちとのあいだ 12.食の場所をつくる:新しい物質代謝論へ    つくる・食べる・分解する    ままならない身体ゆえの自由さ    あわいの倫理:新しいものたちへのケア    朽ちること・還ることの自由と責任
授業の方法
授業では通常の講義形式での授業に加えて、指定する参考文献をあらかじめ読んだ上で議論を行う。 ハイフレックス(対面とオンラインの統合形式)も検討する。
成績評価方法
授業への参加度(20%)、コメントペーパーとショートレポート(30%)、課題レポート(50%)
教科書
授業内に配布
参考書
福永真弓・吉永明弘編『未来の環境倫理学』勁草書房
履修上の注意
特になし