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最終更新日:2024年3月15日

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認識をめぐる不正義と責任:現代認識論の一展開

認識をめぐる不正義と責任――現代認識論の一展開
 2010年代以降、英語圏の認識論で盛んに論じられるようになった「認識をめぐる不正義」(epistemic injustice)の問題と、その不正義を是正する「認識をめぐる責任」(epistemic responsibility)の問題を考察する。そのことを通じて、「認知する」や「認識する」といった営みに否応なく孕まれている倫理的な次元を、その社会的な含意も踏まえつつ、明らかにする。
 哲学の分野においては、認識論と倫理学は別々の領域に属するものとしばしば――「常に」ではないが――見なされてきた。しかしながら、私たちの具体的な生活の場面を考えてみると、多くの場合、倫理の問題は同時に認識の問題でもある。例えば、疾病・障がい・性別・性的指向等による差別、またレイシズム等においては、認識自体が、力関係によって媒介され、相対的に弱い立場に置かれた者は発言権を奪われ、沈黙を余儀なくされることがある。また勇気をもって窮状を訴えたとしても、それは正当な証言としては見なされず軽視されるかもしれない(「証言をめぐる不正義」)。さらに言えば、そもそも、当事者の苦境にたいして、周囲の人々の関心が低いため、その苦境を表現する言葉が開発されず、その結果、本人はその苦境を訴える言葉自体を奪われているかもしれない(「解釈をめぐる不正義」)。
本講義では、まず主にフェミニスト認識論(ないし社会的認識論)による「認識をめぐる不正義」論の基本的な発想・概念を概観・検討する。その際、臨床の文脈において、その基本的発想・概念が、どう発展的に捉えられるのかにも触れたい。そのうえで、.そういった不正義に対して私たちはどのような責任を負っているのかも批判的に考察する。また私自身の認識的不正議論の展開として、「証言をめぐるタイミング」(testimonial timing)という概念を導入することで、共感知、認識的徳/悪徳また認識的不正義をタイミングの観点から考察したい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
21230057
GHS-XX6A01L1
認識をめぐる不正義と責任:現代認識論の一展開
早川 正祐
A1 A2
水曜2限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
人文社会系研究科
授業計画
1.社会的不正義 [Iris Marion Young] 2.フェミニスト認識論――聞くことを中心に据えた認識論 [Lorraine Code] 3.徳認識論と認識をめぐる責任 [Lorraine Code, Heather Battaly] 4.認識をめぐる不正義①――証言をめぐる不正義 [Miranda Fricker, Jose Medina] 5.認識をめぐる不正義②――解釈をめぐる不正義 [Miranda Fricker, Jose Medina] 6.聞くという次元での責任 [Miranda Fricker, Jose Medina] 7.医療における認識をめぐる不正義 8. 証言をめぐるタイミング
授業の方法
基本的には講義形式で行うが、必要に応じてディスカッションを行う。
成績評価方法
授業への参加度と期末レポート
教科書
特になし。プリントを配布する。
参考書
・Lorraine Code, Rhetorical Spaces: Essays on Gendered Locations (1995) ・Heather Battaly, Virtue (2015) ・Miranda Fricker, Epistemic Injustice: Power and the Ethics of Knowing (2007) ・Jose Medina, The Epistemology of Resistance: Gender and Racial Oppression, and Resistant Imaginations (2013) ・Iris Marion Young, Responsibility for Justice (2011)(アイリス・マリオン・ヤング『正義への責任』)
履修上の注意
特になし