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最終更新日:2025年4月21日
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論理哲学の最新の諸問題
論理哲学の最新の諸問題/Recent Problems in Philosophy of Logic
現代論理学の展開との関わりで近年登場した、哲学的に最もpuzzlingな問題の代表は、「”論理”と呼びうる相異なる諸体系が存在することを、一体どう理解すればよいのか」というものでしょう。論理と名がつく諸体系の中で最もよく知られているもの(特に、現代数学の標準的な形式化である公理的集合論において採用されているそれ)は、いわゆる古典論理(classical logic)であり、この論理の最大の特徴は、意味論的な二値原理(Principle of Bivalence)(いかなる命題も真または偽のいずれか一方である、という考え)の採用にあります。一見すると、二値原理は、それ以外に選択肢が考えられないくらい自然なものであり、これを採用することが何らかの特殊な理論的コミットメントを含意するとはにわかには信じられないくらいですが、実際には、特に無限領域上での推論が行われる際に(無限領域上の推論は、現代のあらゆる知的な活動領域において不可欠と言ってよいものです)この原理は独特の強い諸帰結を伴い、そのことのトレードオフとして、理論選択に関わる通常の基準からすれば支持されないような、諸種の重要な概念的区別の破棄が生じることが明らかになってきました(ただし、それがすぐにシリアスな困難を意味するかどうかは、慎重な哲学的吟味を行う必要があります)。他方で、近年の急速な理論コンピュータ科学の発展の中、特に構成的プログラミング理論や関数型プログラミング言語などの分野では、二値原理よりも弱いが概念的透明性がより高い意味論的諸原理、すなわち、いわゆる構成主義(constructivism)的な諸原理に基づく論理が実際に必要とされ、様々に開発されることとなり、これに伴い、それ以前には、古典論理以外には高々直観主義論理(intuitionistic logic)--この論理は、二値原理でなく、ある種の無限進展的な動的原理を採用しており、その点では、非古典論理の模範事例と言ってよいものです--程度しか開発されていなかったのとは一転して、古典論理を頂点とし、直観主義論理を中央点とし、両者の間に無限に多様な中間諸論理、また両者よりも下方に、最小論理、F、BPLといった弱論理が登場し、さらには、矛盾の存在を積極的に受け入れる矛盾許容論理、また、ある意味で最も基礎的で繊細と言える線型論理(linear logic)といったものまでも含んだ、きわめて複雑多様な諸論理の階層構造(それはもちろん単純な全順序ではありません)が生まれるに至りました。では、このような多様な論理体系の共存にはどのような意義があり、哲学的にはいかなる解釈が与えられるべきなのか。本講義では、特別な予備知識を仮定せず、こうした問題をできるだけ判りやすく解説し、特に、(1)過度に特定のイデオロギーに陥らずに、各論理のメリットを生かせる哲学的立場とはどのようなものか、(2)多様な諸論理を適切に保存しつつ統合的に関連付けることのできる統一的な論理的枠組みとはどのようなものか、を考察する予定です。哲学的には、古代ももちろんですが、デカルト・ライプニッツ・カントから、フレーゲ、ウィトゲンシュタイン、新カント派、現象学、そして現代では、とりわけGödel、Tarski、Davidson、Dummett、Jon Barwise、Dana Scott、Kripke、Peter Aczelらの所説との関わりが深いので、これらを適宜取り上げたいと思います。
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