本演習では今までJ. Miller, D. S. Yu, & P. van der Veer ed., Religion and Ecological Sustainability in China, M. Tucker & D. Williams ed., Buddhism and Ecology: the Interconnection of Dharma and Deed(2015年度)、リン・ホワイト『機械と神―生態学的危機の歴史的根源』、ロデリック・ナッシュ『自然の権利』、アラン・ドレングソン、井上有一『ディープ・エコロジー―生き方から考える環境の思想』、ピーター・シンガー『動物の解放』、J. E. ラブロック『地球生命圏―ガイアの科学』、トマス・ベリー『パクス・ガイアへの道―地球と人間の新たな物語』(2016年度)、ファン・ポッター『バイオエシックス―生存の科学』、アルド・レオポルド、『野生のうたが聞こえる』、岩崎茜『アルド・レオポルドの土地倫理―知的過程と感情的過程の融合としての自然保護思想』、石山徳子『米国先住民族と核廃棄物―環境正義をめぐる闘争』、ジョン・パスモア『自然に対する人間の責任』、鬼頭秀一『自然保護を問いなおす―環境倫理とネットワーク』(2017年度)、ウルリヒ・ベック『危険社会―新しい近代への道』、J. ベアード・キャリコット『地球の洞察―多文化時代の環境哲学』、ジェームス・スワン『自然のおしえ 自然の癒し―スピリチュアル・エコロジーの知恵』、桑子敏雄『生命と風景の哲学―「空間の履歴」から読み解く』(2018年度)など、環境倫理に関する著名な著作を講読してきた。本年度も継続して環境倫理における「古典」を講読していく。
今までの講読で明らかになったのは、いわゆる応用倫理と呼ばれる分野の中には、意識的である場合も無意識的な場合もあるにせよ、何らか宗教的な感覚が入りこんでいるということであろう。現代社会における宗教は、既に宗教であることを標榜する団体によってのみ担われているのではない。本人が意識していない場合でも、宗教的な論理や感覚が非宗教的(世俗的)な領域に浸透しており、それが現代における宗教という景観の一面を構成しているのである。講読を通して、そのような現代的宗教性を明らかにしていきたいと考えている。
本年度は以下の書を読むことを予定している。
シュレーダー=フレチェット編、京都生命倫理研究会訳『環境の倫理』2巻、晃洋書房、1993。
R.D.ソレル、金田俊郎訳『アッシジのフランチェスコと自然―自然環境に対する西洋キリスト教的態度の伝統と革新』、教文館、2015。
クレッカー&トゥヴォルシュカ編、石橋孝明ほか訳『環境の倫理』(諸宗教の倫理学―その教理と実生活 第5巻)、九州大学出版会、1999。
福永真弓『多声性の環境倫理―サケが生まれ帰る流域の正統性のゆくえ』、ハーベスト社、2010。
但し、講読する本は変更することがあり得る。