■9月14日(月)10:00~17:00 <人の認知能力とfMRI脳活動計測>
◎MRI装置を用いた脳活動計測の基礎と実践
講師:中村 優子 (東京大学 人間行動科学研究拠点)、橘 亮輔
内容:脳機能画像研究の概略・歴史と機能的MRI(fMRI)の原理を解説する。また、fMRIをもちいた計測実験の実例をしめし、データ解析を体験する。得られた結果について脳活動パターンから何が言えるかを議論する。
◎聴覚と運動を統合する脳メカニズム
担当:橘 亮輔 (東京大学 進化認知科学研究センター)、中村 優子
講義内容:fMRIを用いた脳活動計測研究の例として、聴覚情報を運動制御に統合する神経基盤に関する研究を紹介する。発話や音楽演奏には自分で作り出した音を聞きながら運動をうまく制御しなければならない。これを可能にする神経メカニズムの研究について概説する。
■9月15日(火)10:00~17:00 <言語の知覚認知過程と研究手法>
◎言語の脳内処理 ー 脳波計測
講師:小林 由紀 (東京大学 進化認知科学研究センター)
内容:脳波測定はヒトの脳から生じる電気活動を記録し観察する方法である。特に、特定の刺激に関連して生じる事象関連電位(event-related potentials)は、その刺激の処理過程を反映すると考えられるため,人間の言語処理過程を解明するのに非常に有用である。前半は脳波の基礎知識と測定手法と解析手法、さらに、言語処理過程を脳波測定によってどのように解明するかについて実際の研究例を元にして講義する。後半は脳波測定の実際の場面を紹介し、データ解析の実習をおこなう。
◎ visual world paradigm実験 ー 眼球運動計測
講師:陳 姿因(東京大学 総合文化研究科)
内容:我々人間の目の動きは随意的ではなく、高次の認知的プロセスと密接に関わっている。目がいつ、どこに向けているかは即時処理や予測処理の指標になる。Visual world paradigm実験法とは、音声を聞きながら、複数の視覚提示の中からターゲットを探し出す課題で、特に心理言語学で抽象的な認知プロセスを推定するのによく利用される方法の一つである。授業の前半にはvisual world paradigm実験の原理とデザインする際の注意点を概説する。後半には実際の実験を紹介し、データ分析の実習をおこなう。統計フリーソフトRをもちいる。
■9月16日(水)10:00~17:00 <動物の行動心理実験・神経活動記録>
◎鳴禽類における発声学習の神経機構
講師:柳原 真 (東京大学 総合文化研究科)
内容:子供がことばを学ぶように、鳴禽類の幼鳥は生後の限られた時期に「さえずり」と呼ばれる発声を学習する。鳴禽類の脳内にはこのさえずりに特化した神経回路が明瞭に存在することから、これまで鳴禽類を対象とした発声学習に関する研究が盛んにおこなわれてきた。本講義では、行動学や神経科学の様々な研究手法によって明らかになってきた発声学習の神経機構について概説するとともに、実際に動物脳内の神経細胞から神経活動を計測する生理学実験を紹介する。また、神経活動データの解析を体験する。
◎行動からみる比較認知科学
講師:上條 槙子(東京大学 総合文化研究科)
内容:ヒト以外の動物を対象に研究し比較することで、ヒトの認知機能の仕組みや、いかにして進化してきたのかを明らかにしていくことが可能となる。また、動物を研究することにより、複雑に見えるヒトの行動の基礎となるものが理解されるようになってきた。本講義では、動物を対象に研究をすることで発見された行動の原理から、それらを応用してどのように動物の認知機能を研究してきたのか、研究例を紹介しながら解説する。後半では実際にラットを用いた行動実験例を紹介し、実験計画やデータ解析を体験する。