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最終更新日:2026年10月16日

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スポーツ科学特論I

運動疫学:スポーツ科学・健康科学研究をデザインする
運動疫学は、身体活動・運動・スポーツと健康との関連をヒト集団で明らかにする学問であり、その基盤には疫学的思考と適切な研究デザインがある。本授業では、スポーツ・健康科学の研究を題材として、研究結果を批判的に読み解き、科学的に妥当な研究を計画するための基本的な考え方を学ぶ。

例えば、介入前に血圧の高い人だけを選び、その後の変化を観察すると、介入効果がなくても平均への回帰によって血圧が低下してみえることがある。このような具体例を通じて、選択バイアス、情報バイアス、交絡、逆因果、偶然誤差など、ヒトを対象とする研究で生じる代表的なピットフォールを理解する。

記述研究、横断研究、症例対照研究、コホート研究、ランダム化比較試験の特徴と限界を学び、先行研究の批判的吟味を行う。後半では、各自の研究テーマ(卒業研究・修士研究等を含む)を題材として、研究疑問の明確化、先行研究の整理、研究デザインの立案、発表までを行う。

到達目標は以下の3点である。
1)疫学の基本概念、基本用語、主要な研究デザインを説明できる。
2)スポーツ・健康科学の研究結果を、バイアス・交絡・因果関係の観点から適切に解釈できる。
3)研究疑問に応じて適切な研究デザインを選択し、その研究計画を論理的に説明できる。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
08E1426
FAS-EA2F25L1
スポーツ科学特論I
笹井 浩行
A1 A2
集中
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講義使用言語
日本語/英語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
可
開講所属
教養学部
授業計画
第1回 運動疫学の基本と疫学的思考 授業のガイダンスを行い、疫学とは何を明らかにする学問かを確認する。スポーツ・健康科学における疫学の役割、因果関係を考える際の基本的な視点を学ぶ。 第2回 信頼性の高い健康・スポーツ情報とは何か 健康情報やスポーツ情報の信頼性を評価する視点を学ぶ。ニュース、SNS、研究論文などの情報を題材に、ヘルスリテラシーと研究結果の読み方を討議する。 第3回 科学的根拠に基づく医療・スポーツ科学 Evidence-Based Medicine(EBM)およびEvidence-Based Sports Science(EBSS)の基本的な考え方を学ぶ。エビデンスの強さ、研究デザインと因果推論の関係を整理する。 第4回 疫学の基本用語・基本統計と研究のピットフォール 有病割合、発生率、リスク、オッズ、相対リスクなどの基本用語を確認する。併せて、選択バイアス、情報バイアス、交絡、平均への回帰、逆因果など、研究結果を歪める代表的な要因を学ぶ。 第5回 記述疫学・地域相関研究 記述疫学研究と地域相関研究の目的、読み方、限界を学ぶ。公的統計や代表的な疫学研究を題材として、集団レベルの関連を個人レベルへ安易に適用することの問題などを検討する。 第6回 横断研究の読み方・組み立て方 横断研究の特徴、適用場面、解析結果の解釈を学ぶ。時間的前後関係や逆因果の問題を中心に、研究疑問に対して横断研究が適切かを検討する。 第7回 症例対照研究の読み方・組み立て方 症例対照研究における症例と対照の選定、曝露評価、オッズ比の解釈を学ぶ。選択バイアスや想起バイアスなど、典型的なピットフォールを検討する。 第8回 コホート研究の読み方・組み立て方 コホート研究の基本構造、追跡、発生率、リスク比の考え方を学ぶ。脱落、交絡、時間依存性など、長期追跡研究で生じる問題を検討する。 第9回 ランダム化比較試験の読み方・組み立て方 ランダム化、対照群、盲検化、アドヒアランス、intention-to-treat解析など、ランダム化比較試験の基本を学ぶ。運動・スポーツ介入研究特有の実施上の課題についても扱う。 第10回 研究疑問の明確化と先行研究の探索 各自の研究テーマをもとに、研究疑問を明確化する。先行研究を探索し、既知の知見と未解決の課題を整理する。 第11回 研究デザインの立案 研究疑問に対して、対象者、曝露・介入、比較、アウトカム、追跡期間、研究デザインを具体化する。想定されるバイアスや交絡への対応も検討する。 第12回 研究計画の発表準備と相互レビュー 立案した研究計画をスライドにまとめる。受講者間で相互にレビューし、研究疑問と研究デザインの整合性、実現可能性、解釈上の注意点を検討する。 第13回 研究計画発表と総括 各自が研究計画を学会発表に準じた形式で発表し、質疑応答を行う。授業全体を振り返り、スポーツ・健康科学の研究を批判的に読み、適切にデザインするための要点を総括する。
授業の方法
講義、先行研究の批判的吟味、受講者間の討議、研究計画作成を組み合わせて進める。講義ではスライド資料と実際の研究例を用い、疫学の基本概念と研究デザインを解説する。各テーマでは、研究結果を解釈する際に生じやすいピットフォールを具体例から検討する。 後半では、各自の研究テーマを題材として研究疑問を明確化し、先行研究を踏まえて研究デザインを立案する。最終回には研究計画を発表し、質疑応答を通じて内容を改善する。クラスサイズや受講者の研究背景に応じて、討議や演習の比重を調整する。
成績評価方法
出席・授業参加、授業中の討議、発言、質問等への積極的な参加、最終研究計画プレゼンテーション(内容、論理性、研究デザインの妥当性、発表、質疑応答)により総合的に評価する。
履修上の注意
各回の授業前に、授業テーマに関連する基本事項を確認しておくこと。授業後は配布資料および紹介した文献を用いて復習すること。後半の演習では、各自が関心を持つ研究テーマを一つ準備し、先行研究の探索と研究計画の作成を進める。疫学や統計学の履修経験は必須ではないが、主体的に討議へ参加することを期待する。
その他
授業内容は受講者の研究分野や理解度に応じて一部調整することがある。スポーツ傷害、スポーツパフォーマンス、身体活動、健康アウトカムなど、幅広いスポーツ・健康科学研究を対象とする。