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最終更新日:2026年4月20日
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バイオ・ソフトマターの物理[物質基礎科学コース]
バイオ・ソフトマターの物理
ディスプレイに用いられる液晶や食品中のゲル、さらには私たち自身を含む生体組織は、いずれも「柔らかい(ソフト)」という共通した物理的特徴をもつ。これらの物質は主に高分子やタンパク質、コロイド粒子などから構成されており、このような柔らかな凝縮系を総称してソフトマターと呼ぶ。
本講義では、ソフトマターが示す多様な相転移や力学的・動的性質を物理的に理解することを目的とする。そのために、熱力学および統計力学に基づく理論的枠組みを基礎から解説し、それらがどのように実験事実と結びつくのかを具体例と共に学ぶ。
講義前半では、まず熱力学・統計力学の初歩的概念を復習し、1成分系における相転移や多成分系における相分離をどのように記述・理解できるかを説明する。また実験的な相図の作成法やその理解の仕方についても紹介する。次に、熱力学と弾性論を接続することで、高分子(棒状分子・紐状分子)やその集合体である膜の力学的性質を扱う。具体的には、変形と力の釣り合い(Young–Laplace則)、弾性的応答、座屈現象などを学ぶ。これらの概念は、液滴や泡の安定性、生物細胞の形態形成、DNAの折り畳みなどを理解する上で重要である。続いて、相転移の代表例として液晶を取り上げる。液晶は、細長い分子が一定の配向秩序を持つ相であり、対称性の自発的破れによって出現する。液晶ディスプレイの動作原理の基盤となるフレデリクス転移を例に、対称性と熱力学に基づく転移現象の理解を深める。講義後半では、ソフトマターに特有の動的現象を扱う。まず、コロイド粒子1個の熱ゆらぎに起因する拡散運動を出発点とし、分子間相互作用が導く凝集過程へと議論を拡張する。このような動的過程の理解は、アミロイド様タンパク質の凝集現象など、生体内で起こる非平衡的プロセスの記述にもつながる。
以上を通して、本講義では、静的および動的な振る舞いの両面からソフトマターを統一的に理解するための基礎的な物理的視点を身につけることを目標とする。
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