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物質基礎科学特殊講義V

細胞機能とその数理
イメージングや次世代シーケンスなど、生命システムを定量的に計測しうる技術の発展とともに、複雑な生命システムの動態を解析・理解する方法として、物理的な生命現象のみかたや数理に基づく記述の重要性が近年大きく高まっている。本授業では、細胞を単位とした生命システムを扱う数理的・物理的な手法や関連するトピックを体系的に概説する。

本授業は、反応速度論を基礎として展開する。
速度論をもとに、細胞レベルでの生体システムの記述に必要な各種概念を導入し、また反応系の熱力学的な性質についても触れる。
その後、具体的な細胞システムの実例を紹介しつつ、反応系の組み合わせから様々な機能性、例えば様々な変動への非線形性応答性や、記憶や振動などの動的な現象、そして頑健性のような非自明な現象が現れる背後にあるメカニズムを解説する。
受講者の知識に合わせて、決定論的な理論を中心に授業を構成するか、よりアドバンスドな確率論などを含めた内容を加えるか、判断する。
具体的な実験的知見は主に単細胞生物の知見を主に紹介するが、関連する多細胞生物の現象についても言及する予定である。



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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
08E1160
FAS-EA4C57L1
物質基礎科学特殊講義V
小林 徹也
S1 S2
集中
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教室
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教養学部
授業計画
授業では受講者の知識に合わせて、下記のリストからトピックを選び講義を行う: ・反応速度論基礎:微分方程式・フィードバックループ・反応の物理化学 ・反応の縮約:各種基本方程式(Michaelis-Menten, Hill 方程式)の背景と導出、活用法 ・細胞の非線形応答:質的に異なる入力(分子濃度、分子種類)への非線形応答のメカニズムと非平衡性との関連 ・細胞の記憶:正のフィードバックループと多安定状態 ・細胞の時間:負のフィードバックと多様な振動現象 ・細胞の動的情報処理:動的な入力への細胞応答 ・細胞の頑健性:完全適応、絶対濃度補償性、温度補償など ・確率的化学反応の数理 ・遺伝子発現ネットワークとゆらぎ・フィードバックの流れ ・ノイズ励起現象と生体運命決定 ・表現形ゆらぎと細胞増殖 ・表現形選択と情報の進化的価値 ・生体情報処理における数理的課題
授業の方法
講義による。
成績評価方法
出席とレポートによって評価する。詳細についてはガイダンス時に伝える。
教科書
教科書は指定しない。
参考書
以下の書籍や記事が参考になる: ・"システム生物学入門 -生物回路の設計原理"、Uri Alon (著), 倉田 博之 (翻訳), 宮野 悟 (翻訳) 、共立出版. ・"生命科学の新しい潮流 理論生物学"、望月 敦史 (編集) 、共立出版. ・ウェットウェア: 単細胞は生きたコンピューターである、デニス・ブレイ (著), 熊谷 玲美 (翻訳), 田沢 恭子 (翻訳), 寺町 朋子 (翻訳) 、早川書房 ・"定量生物学 生命現象を定量的に理解するために", DOJIN BIOSCIENCE SERIES, 化学同人 ・"生命システムを定量する!", 実験医学 2013年5月号, 羊土社 ・"Physical Biology of the Cell", Rob Phillips(他), Garland Science. ・"Biophysics: Searching for Principles", Bialek, W., Princeton University Press ・"Cell Biology by the Numbers", Ron Milo & Rob Phillips, Garland Science  ・Stochastic Methods: A Handbook for the Natural and Social Sciences, Crispin Gardiner (著), Springer.  ・Stochastic Processes in Physics and Chemistry, Third Edition, N.G. Van Kampen (著), North Holland.  ・Elements of Information Theory, Thomas M. Cover (著), Joy A. Thomas (著), Wiley-Interscience.  ・情報理論の基礎―情報と学習の直観的理解のために, 村田 昇 (著), サイエンス社.  ・Thermodynamics of Information Processing in Small Systems, Takahiro Sagawa (著)
履修上の注意
各問題についての具体的な生物学的な知識は仮定しないが、DNAやタンパク質、セントラルドグマ、化学反応などの基本的事項は理解していることが望ましい。 数理的な側面については、線形代数と微分方程式の基礎(学部1,2年生程度)については勉強したことがあることを最低限想定する。