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最終更新日:2026年10月16日

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量子力学III[数理自然科学コース]

量子ダイナミクス,光と物質の相互作用,対称性,多粒子系と場の量子論
量子力学IIの内容を既修であることを前提とし,より進んだ量子力学を学ぶ.まず基本事項を総括した後,以下の4つのテーマを中心に,必要な内容を補足しながら講義を進める.各テーマについて具体的な問題を提示し,その解決過程を通じて重要事項を解説する.

テーマ1「量子ダイナミクス」では,時間に依存する2状態系を厳密解法・近似解法の両面から解析し,Rabi振動,断熱近似,ベリー位相,フロケ理論などとのつながりを学ぶ.

テーマ2「光と物質の相互作用」では,時間依存摂動論と電磁場の量子論を学び,水素原子の励起状態からの光子放出と寿命を具体的に計算する.

テーマ3「量子力学における対称性」では,1次元束縛状態に縮退がない理由と,2次元以上で縮退が可能となる理由を対称性の観点から考察し,対称性と保存則,群論との関係を学ぶ.

テーマ4「多粒子系と場の量子論」では,同種粒子,ボース粒子とフェルミ粒子,占有数表示,生成・消滅演算子,第二量子化を学び,多粒子系の量子力学から場の量子論へ至る基本的な考え方を理解する.
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
08E1017
FAS-EA3B18L1
量子力学III[数理自然科学コース]
岸根 順一郎
A1 A2
木曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
可
開講所属
教養学部
授業計画
第1回 量子力学の基本事項と2状態量子系 量子力学IIまでに学んだ基本事項を総括する.状態ベクトル,演算子,時間発展,パウリ行列などを復習し,2状態量子系を記述する一般的なハミルトニアンとブロッホ球による表現を学ぶ. 第2回 2状態量子系のダイナミクス 時間に依存する2状態系のシュレーディンガー方程式を,回転座標系への変換を用いて厳密に解く.ユニタリ変換,回転演算子,時間発展演算子などについて理解を深める. 第3回 2状態量子系の応用 Rabi振動やニュートリノ振動を取り上げ,量子状態の重ね合わせと時間発展が実際の物理現象にどのように現れるかを学ぶ. 第4回 断熱近似とベリー位相 時間変化するハミルトニアンに対する断熱近似を学び,断熱的時間発展に伴って現れるベリー位相を理解する.Landau–Zener問題を通じて断熱近似の成立条件とその破れについて考察する. 第5回 周期駆動系とフロケ理論 時間的に周期変化するハミルトニアンを扱うためのフロケ理論の基本的な考え方を学び,準エネルギーと周期駆動された量子系の時間発展を理解する. 第6回 時間依存摂動論 相互作用描像と時間依存摂動論を学び,量子状態間の遷移確率とフェルミの黄金律を導出する. 第7回 電磁場の量子論 電磁場を量子化する手続きを学ぶ.電磁場の各モードと量子調和振動子との関係,光子の生成・消滅演算子,光子数状態,コヒーレント状態について学ぶ. 第8回 電子と光子の相互作用 量子化された電磁場と原子中の電子との相互作用を扱う.水素原子の2p状態から1s状態への遷移を具体例として,光子の放出確率と励起状態の寿命を計算する. 第9回 量子力学における対称性と保存則 量子力学における対称変換とユニタリ演算子の関係を学ぶ.回転,空間並進,時間並進などを例として,対称性と保存則の関係を理解する.また,1次元束縛状態に縮退が生じない理由を考察する. 第10回 対称性と縮退 2次元以上の量子系における縮退を対称性の観点から理解する.群の表現,既約表現,指標の基本事項を導入し,2次元正方形井戸を具体例として,縮退と群論との関係を学ぶ. 第11回 同種粒子と量子統計 単一粒子の量子力学から多粒子系へ進み,同種粒子に対する置換対称性を学ぶ.ボース粒子とフェルミ粒子,波動関数の対称化・反対称化と量子統計との関係を理解する. 第12回 占有数表示と生成・消滅演算子 多粒子状態を占有数によって表す方法を学ぶ.ボース粒子およびフェルミ粒子の生成・消滅演算子と交換関係を導入し,第二量子化の考え方を理解する. 第13回 場の量子論への導入 位置に依存する場の演算子を導入し,第一量子化の波動関数と第二量子化された場との関係を学ぶ.1体・2体ハミルトニアンの第二量子化表示を通じて,多粒子系の量子力学から場の量子論へのつながりを理解する.
授業の方法
板書中心の講義形式で進める.必要な数学的事項や量子力学の基本事項は,問題に即して随時補足する. 講義ノートを配布し,式の導出や計算過程をできるだけ省略せずに説明する.受講者には,講義を聞くだけでなく,自ら計算を追い,提示された問題を自力で解けるところまで理解を深めることを求める.
成績評価方法
成績は学期末試験により評価する.試験範囲および出題内容の趣旨は事前に具体的に示し,何を理解し,何を自力でできるようになるべきかを明確にする.そのうえで,試験に向けて自ら手を動かして問題を解き,自力で解決できるところまで理解を深める過程そのものを,本授業における重要な学習と位置づける. ※生成AIを用いれば,従来型のレポート課題に対するもっともらしい解答を容易に作成できる時代になった.したがって,レポートのみでは,受講者本人が実際に何を理解し,何を自力で解決できるようになったのかを適切に評価することが難しい.本授業では,あらかじめ試験の範囲と問題の趣旨を明示し,そこに向けて十分に準備することが,知識や考え方を実際に自分のものとして身につけるために最も有効であると考える. ランダウは試験について,「成績のために試験を受ける者は試験を嫌うが,知識のために受ける者は試験を好む」と述べたと伝えられている.本授業でも,試験に備えて学ぶことで,本当に理解できるようになることに意味がある. この考えに基づき,レポート課題による評価は行わず,学期末試験によって評価する.
履修上の注意
量子力学IIの内容,つまり量子力学の基本形式,調和振動子,3次元量子力学,角運動量とスピン,近似法,電磁場中の荷電粒子,量子散乱に関する基礎事項を既修であることを前提とする.
その他
講義資料は、UTASの授業科目ページ「教材」欄にアップ済みです。授業前にあらかじめ目を通しておくとよいでしょう。