この授業では、フランス18−19世紀における統計学の社会史・文化史に業績を残したエリック・ブリアン(Éric Brian, 1958-2025)の著書、Are Statistics Only Made of Data?: Know-how and Presupposition from the 17th and 19th Centuries (2024)の抜粋を検討する。ブリアンはフランス・エピステモロジーとインテレクチャル・ヒストリー(知性史)の流れを汲む科学史研究者であり、ピエール・ブルデューの社会学理論も取り入れつつ確率論史・統計学史研究を開拓していた。彼の強みは、数字とその計算の背景に、過去の人々の具体的な実践の諸相や、彼らが前提としていた認識論的視座、および社会的・文化的な背景を再構成することの鮮やかさにあった。本書では、統計データが関わりを持つ様々な歴史事例を「抽象化の歴史」という視座から読み解いていく。講読を通じて受講者は、抽象化された対象に文脈を取り戻し、それを歴史認識論的視座から検討する視点を深めることができるはずである。