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最終更新日:2024年4月1日

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言語文化論特殊研究(4)

ピエール・クロソウスキーのサド論を読む
ピエール・クロソウスキー(1905-2001)という作家は20世紀のフランス文学・思想のなかで特異な位置を占めている。バタイユやブランショなどと並び称されながらも、哲学的・神学的思弁と猥雑さが混在したそのエクリチュールは極めて個性的である(画家バルテュスの兄であり、彼自身が画家でもある)。それと同時に、たとえば代表的な小説『歓待の掟』(1965)では、歓待や交換・贈与、「書くこと」の問題などをめぐり、現代の社会においても通じるような、さまざまな思考が展開されている。

本授業ではクロソウスキーの評論集『わが隣人サド』再版時に付された巻頭論文「悪虐の哲学者」を読む。サドは20世紀において、バタイユ、ブランショ、ボーヴォワール、ラカン、フーコー、ドゥルーズ、バルト、ソレルスなど多くの作家や哲学者が熱を込めて論じた一大アイコンであった。中でもクロソウスキーの実質的なデビュー作である1947年の『わが隣人サド』は、彼らに先んじたものだが、刊行当初は毀誉褒貶相半ばし、バタイユやシュルレアリストたちをはじめとする人々から批判も受ける。そして、1967年に同書の再版が世に出た際、クロソウスキーは論考を二つ削除し、序文でかつての主張を修正すると述べた上で、新たに「悪虐の哲学者」というテクストを巻頭に置き、サドの思想の価値を新たに位置づけなおすことになる。

ここでは「サドの体験」と「サドの記述行為」の関係が論じられているほか、サドと無神論との関係、倒錯や侵犯のモチーフなどさまざまな視点が現れるが、そのいずれもが、クロソウスキーがサドを通じて見ようとしていたものを明らかにするものである。この授業ではそれが何かを考えてみたい。
  
この授業では、20世紀フランスきっての散文家ともいわれるクロソウスキーの文体の特徴にも触れながら、その思考における特徴を大づかみに把握すると同時に、受講者が今後関連する文献を読んでいくときの訓練にもなればと思う。

※履修を希望する場合は、かならず初回授業に参加してください。Zoomによるリアルタイムのオンライン授業を基本とします。

※フランス人でさえ理解が容易でない、かなり構文の入り組んだテクストを原典で読んでいきます(アルフォンソ・リンギスによる英訳も配ります)。そのため大学院生中心の授業になりますが、意欲ある学部生の参加も可としています。読むのは大変だとは思いますが、最後まで読み通せればきっと何か見えてくるものがあるでしょう。こちらでも適宜解説を加えながら補助をします。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
08C161904
FAS-CA4H18L1
言語文化論特殊研究(4)
大森 晋輔
A1 A2
月曜2限
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講義使用言語
日本語、フランス語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教養学部
授業計画
第1回 イントロダクション(概要と担当の割り振り) 第2回~第12回 「悪虐の哲学者」講読 第13回 まとめ
授業の方法
演習形式。受講生による発表とディスカッション。
成績評価方法
発表などによる授業への参加度、およびレポートによる。
教科書
プリントを配布する。
参考書
- Pierre Klossowski, Sade, mon prochain, Paris, Seuil, coll. « Pierres vives », 1947; réédité, modifié et précédé d'un « Avertissement », et du texte : « Le philosophe scélérat », même éditeur, coll. « Pierres vives », 1967; réédité coll. « Points essais », 2002.(『わが隣人サド』豊崎光一訳、晶文社、1969年) - Pierre Klossowski, Sade, my neighbour, trans. by Alphonso Lingis, Studies in Phenomenology and Existential Philosophy, 1991. - Jane Gallop, Intersections : A Reading of Sade with Bataille, Blanchot, and Klossowski, University of Nebraska Press, 1981. - Éric Marty, Pourquoi le XXème siècle a-t-il pris Sade au sérieux?, Paris, Seuil, 2010.(エリック・マルティ『サドと二十世紀』森井良訳、水声社、2018年) 以下はクロソウスキーに関する、日本語で読める参考書の一部である。 ・『夜想』、「特集 クロソウスキー」(ペヨトル工房、1987年8月) ・『ユリイカ』、「増頁特集 クロソフスキーの世界」(青土社、1994年7月) ・大森晋輔『ピエール・クロソウスキー 伝達のドラマトゥルギー』(左右社、2014年) ・大森晋輔編『ピエール・クロソウスキーの現在 神学・共同体・イメージ』(水声社、2020年)
履修上の注意
履修を希望する場合は、かならず初回授業に参加すること。
その他
授業開始一週間前までにUTASにZoom情報を掲出します。