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最終更新日:2025年4月21日
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原典講読特殊演習(3)[言語態・テクスト文化論コース]
記紀万葉における天皇統治の表象と人文学の受難
『古事記』『日本書紀』および『万葉集』に表れた古代天皇制正当化の言説が大日本帝国に引き取られ、再利用された経緯を概観するとともに、近代人文学の発展にとって足枷となった事情を跡づけていく。森鷗外「かのやうに」に影を落とした三つの事件(久米邦武「神道は祭天の古俗」事件・大逆事件・南北朝正閏論問題)から説き起こしつつ、人文学の発展により明治末期には記紀神話の史実性が公然と否認されるに至っていたこと、だからこそ大正期には津田左右吉による記紀批判が敢行されえたことを確認する一方、昭和の戦争準備期には軍部と右翼の策動により滝川事件・天皇機関説事件が相次いで持ち上がり、国体明徴の大合唱のもと、神武紀元二千六百年という国家的虚構を成り立たせるべく津田の研究が弾圧の対象となったこと、等々を見届けていく。
人文学が相互批判を通して知の高みを目ざす営みであること、その意味で民主主義の理念と一心同体であることを理解するとともに、これを弾圧することが何を意味するか納得できたとき、目標が達成されたことになる。
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原典講読特殊演習(3)[言語態・テクスト文化論コース]
品田 悦一
S1
S2
火曜5限
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
可
次の順に進める。
1、森鴎外「かのやうに」の投げかけるもの(種々の解釈、同時代言説との関連)。
2、『古事記』上巻および『日本書紀』神代巻の基本構造(古代律令国家の成立と神話の編纂、津田左右吉の基本的視座)、
3、井上毅の「しらす」論と大日本帝国憲法(幕末・明治初頭の国体論、民権論者たちの天皇論、国体論と君権制限論の軋轢、『憲法義解』)、
4、東京大学文学部附属古典講習科の意義(井上毅と池辺義象、古典講習科設立の歴史的背景、教育勅語)。
5、「明治の教育」が育てた者たち――近代人文学の発足・展開・挫折(チェンバレンの慧眼、明治後期国民文学運動の展開と近代神話学の発足、歴史と神話の峻別とこれらを包摂する契機としての民族性)。
6、「怪物」襲来(――原理日本社、滝川事件、天皇機関説事件、「かのやうに」としての国体明徴、神武紀元二千六百年祭、津田の受難)。
レポートを提出してもらう。その課題は学期末が近づいた時点で指示する。そのほか、授業の進度とも相談しながら、Googleフォームによる小テスト(5点満点)を2回ほど実施する予定。また「かのやうに」のテーマをどう解釈するかについてアンケートを実施する。この回答は成績評価の対象ではないが、アンケートに参加しなかった場合は減点の対象となる。
資料は大部にわたるだけでなく、かなり細かいものが含まれるので、初見で直ちに理解しにくい場合があるだろう。進行予定に沿ってあらかじめ当日分の資料に目を通し、分かりにくそうな箇所に見当をつけるとともに、難しい語句や未知の人名についてはネット検索で一通りの知識を得たたうえで授業に臨むようにされたい。これが予習になる。これをするのとしないのとでは、理解度に相当の開きが出るはずである。メールでの質問にも応じるので、積極的に活用されたい。
森鴎外の短編「かのやうに」をなるべく早い時期に読んでおくこと(各種文庫のほか、青空文庫でも読めるし、短いから時間はかからない)。連休明けに、その解釈についてアンケートを行なう予定である