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最終更新日:2025年4月21日
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テクスト文化論基礎
都市/物語のかたち ― 時空の位相
(目標)この授業では都市に関わる文学テクスト(翻訳を含む)を分析しながら、その背後にある空間や時間の概念について文化的な基盤と意義を解きほぐしていくことを目的とします。
(概要)都市は時の経過にしたがってかたちを変える、と言ってしまえば陳腐な理のように聞こえますが、都市は語りにしたがってかたちを変える、と文学的に言い直してみると謎めいてきます。歴史的時間のなかで都市が盛衰を繰り返すように、文学作品に描かれた都市は語りの展開とともに新たな姿を現し、ときに表情を変え、変貌していきます。そのかたちは言語上どのように捉えられ、表象されているのでしょうか。
この授業では都市のかたちを、物語という虚構のなかで捉えて考えていきます。毎回、都市の文学的表象の事例を東西の文学作品からとりあげ、虚構の中で語られた都市のかたちを言語構築物として解きほぐしていきます。
記憶のなかに埋没してしまった都市、時代に取り残された都市、祝祭的時間を永遠に湛えた都市、常に新たな記号と意味を生成し続けるパリンプセストのような都市、群衆が行き交い、混沌を深める都市、スラム化し、犯罪を増殖させ、闇を深めていく都市。それぞれの都市を語り紡ぐとき、そこには非現実の空間が構成されていきます。それをどのように味わい、解釈したらいいのでしょうか。
フィクションであれ、あるいは歴史的記述であれ、言説によって描かれる都市は過去や現在に固定されているわけではなく、語りが紡ぎ出す言葉と筋によって構築されていきます。それは主体の心の中に埋没し、いつの間にか変形してしまった記憶の都市なのかもしれませんし、あるいは時間とともに神話化してしまった集合的記憶に閉じ込められた共同体かもしれません。記憶も都市も固形物ではなく、可塑的な生命体であり、それはそれを見つめる主体の主観に呼吸をし、その語りと言語によって彫塑されていきます。生命体としての都市のかたちと語りの言葉は、交渉と分裂を繰り返しながら虚構内に新たな時空間を構築していきます。
時空の感覚があいまいになり、主体と客体の区別さえ溶解していくトポス。淀んだ川の淵のようでいて、その底でゆっくりと流れ続ける意識に沈んだ都市。それを言説化する行為は、語りとしてどのような問題を提起することになるのでしょうか。それらをいくつかの短めの小説を読みながら考えてみたいと思います。
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