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最終更新日:2024年4月22日

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テクスト文化論基礎

都市/物語のかたち  ― 時空の位相
(目標)この授業では都市に関わる文学テクスト(翻訳を含む)を分析しながら、その背後にある空間や時間の概念について文化的な基盤と意義を解きほぐしていくことを目的とします。

(概要)都市は時の経過にしたがってかたちを変える、と言ってしまえば陳腐な理のように聞こえますが、都市は語りにしたがってかたちを変える、と文学的に言い直してみると謎めいてきます。歴史的時間のなかで都市が盛衰を繰り返すように、文学作品に描かれた都市は語りの展開とともに新たな姿を現し、ときに表情を変え、変貌していきます。そのかたちは言語上どのように捉えられ、表象されているのでしょうか。
 この授業では都市のかたちを、物語という虚構のなかで捉えて考えていきます。毎回、都市の文学的表象の事例を東西の文学作品からとりあげ、虚構の中で語られた都市のかたちを言語構築物として解きほぐしていきます。
 記憶のなかに埋没してしまった都市、時代に取り残された都市、祝祭的時間を永遠に湛えた都市、常に新たな記号と意味を生成し続けるパリンプセストのような都市、群衆が行き交い、混沌を深める都市、スラム化し、犯罪を増殖させ、闇を深めていく都市。それぞれの都市を語り紡ぐとき、そこには非現実の空間が構成されていきます。それをどのように味わい、解釈したらいいのでしょうか。
 フィクションであれ、あるいは歴史的記述であれ、言説によって描かれる都市は過去や現在に固定されているわけではなく、語りが紡ぎ出す言葉と筋によって構築されていきます。それは主体の心の中に埋没し、いつの間にか変形してしまった記憶の都市なのかもしれませんし、あるいは時間とともに神話化してしまった集合的記憶に閉じ込められた共同体かもしれません。記憶も都市も固形物ではなく、可塑的な生命体であり、それはそれを見つめる主体の主観に呼吸をし、その語りと言語によって彫塑されていきます。生命体としての都市のかたちと語りの言葉は、交渉と分裂を繰り返しながら虚構内に新たな時空間を構築していきます。
 時空の感覚があいまいになり、主体と客体の区別さえ溶解していくトポス。淀んだ川の淵のようでいて、その底でゆっくりと流れ続ける意識に沈んだ都市。それを言説化する行為は、語りとしてどのような問題を提起することになるのでしょうか。それらをいくつかの短めの小説を読みながら考えてみたいと思います。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
08C1602
FAS-CA4H02L1
テクスト文化論基礎
大石 和欣
S1 S2
月曜2限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教養学部
授業計画
第1回 ガイダンス シャルル・ボードレール 「通りすがりの女に」、「白鳥」 抜粋配布 第2回 課題小説 谷崎潤一郎「秘密」 抜粋配布 第3回 課題小説 江戸川乱歩 「目羅博士の不思議な犯罪」(『江戸川乱歩全集』(光文社文庫)第8巻)抜粋配布 第4回 課題小説 中上健次「路地」 抜粋配布 第5回 課題小説 W. G. ゼーバルト「マックス・アウラッハ」(『移民たち』(白水社))抜粋配布 第6回 課題 ウィリアム・ブレイク「ロンドン」 配布 第7回 中間レポート(2000字程度) 第8回 自由課題 (参考文献) 前田愛『都市空間のなかの文学』(ちくま学芸文庫) 第9回 自由課題 (参考文献) 田中純『都市の詩学——場所の記憶と徴候』(東京大学出版会、2007年) 第10回 自由課題 (参考文献) 大石和欣『家のイングランド』(名古屋大学出版会、2019年)  第11回 自由課題 (参考文献) ロラン・バルト『表徴の帝国』(ちくま学芸文庫、1996年) 第12回 自由課題 (参考文献) 陣内秀信『東京の空間人類学』(筑摩書房、1985年) 第13回 総括  最終レポート(4000字程度) 締切 7月21日
授業の方法
毎回の授業は、各回、都市空間をテーマにした短編・小説一篇を軸に進めていきます。 前半部では履修者は毎回課題の小説を読み、短いコメントを提出します。それをもとに授業ではまず全員でディスカッションを20分ほど行い、その後適宜質疑応答を交えながらゼミ形式で授業を進めます。 後半の授業では、二次資料として参考となる文献からの抜粋を読解する一方で、履修者が自由に課題小説(詩・散文でも可)を選び、それについて自由に解釈を行い、授業においてディスカッションを行います。 学期全体の授業の構成、具体的な進め方、また取り扱う文献の詳細については、最初の授業の時に提示すると同時に、履修者が選択する作品についても候補を挙げていただきます。
成績評価方法
出席態度・ディスカッション30%、毎回のコメント35%(欠席もしくはコメント未提出は5点減点)、レポート35%
教科書
特定の教科書はありません。6回までは抜粋をこちらで用意しますが、それ以降は基本的に各自でご用意をお願いします。
参考書
最初の授業で参考文献リストを配布します。
履修上の注意
Google classroom経由でハンドアウトやテクスト抜粋を配布するので、授業開始前に以下のURLにてGoogle Classroomに登録すること。 https://classroom.google.com/*****