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最終更新日:2024年3月15日

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東洋古典学

中国古典をどう読むか:『論語』を例に
 日本における「古典」とは何かと問えば、『万葉集』や『源氏物語』などと並んで、『論語』『史記』などの中国古典が挙げられるだろう。むしろ、近代のある時期に至るまでは、儒教の経典をはじめとする漢籍こそが、日本人の学ぶべき古典として意識されていた。中国はもとより、日本を含む東アジアについて、少しでも歴史的視点から考えようとするなら、漢籍とのつきあいを避けて通れない。
 日本は中国とともに今も漢字を使い続けており、高等学校でも漢文を学習するから、日本で教育を受けてきた者は、漢籍の理解については比較的有利な位置にあるように思えるが、それでも実際の漢籍にふれれば、戸惑いを禁じ得ないだろう。それは漢文読解力の不足によるところが大きいが、それとともに、漢籍が長年にわたって読み継がれてきた伝統や、その中で生まれた種々の約束事を学ぶ機会がなかったからである。
 そこでこの授業では、「経書」(儒教の経典)に絞ってそのあらましを講述し、さらに『論語』について、実際の解釈の作業を体験してもらう。東アジアを歴史的視点から研究しようとする者に、その土台を築くことが目標である。
 『論語』は、いわゆる「四書五経」のうち四書に含まれるが、もとは経書ではなかった。本来、経書とは五経のことであり、それは孔子が伝え教えたとされるものであって、孔子自身の言葉ではなかった。しかし、孔子の言葉を収めた『論語』も尊重されるようになり、朱子学において四書が重んじられると、五経と同等以上の重みを持つようになった。このように書物としての地位が変動したことに加え、短い断章の集積であるため、その読解は注釈に大きく依存せざるを得ない。章によっては、注釈によって解釈が一変することもある。
 既存の訳に頼らず、自ら古典にふれてみようと思う者は、東アジアを専門としなくても、受講の資格がある。スタートラインとしては、高等学校卒業程度の漢文の知識があればよく、それは入試において保証されているはずである。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
08C1415
FAS-CA4F15L1
東洋古典学
谷口 洋
A1 A2
月曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教養学部
授業計画
 前半は、おおむね以下のような内容を講述する。細かいことは実際の読解の場で体得してもらうことになるから、ここでは全体の大枠をつかむことを旨とする。 ・漢籍とは何か ・経書とは何か ・経書の伝承と注釈の歴史 その背後にある思想的背景 ・版本の基礎知識と扱い方 ・『論語』のあらまし ・『論語』の注釈史 『論語』に固有の問題  これらをふまえ、後半は『論語』の各章について、受講生が分担して読解する。各種の注釈を調査し、そこに現れた解釈の違いについて、簡潔にまとめて発表する。担当者が十分に準備しなければならないのはもちろんだが、その他の者も予習をしていないと、まったく話についてゆけなくなるので注意すること。  ただ資料を訳しておしまいではなく、それらの背後にうかがえる思想や言語観などについて、さらにはそこからほの見える古代の文化について、皆で語り合う場にしたい。
授業の方法
前半は教員による講義、後半は学生の調査・発表と討論による演習形式である。
成績評価方法
演習における発表や討論の状況と、自分の発表をふまえて作成してもらうレポート(担当箇所の訳注と解説)とによって評価する。
教科書
プリントして配布する。特に演習のテキストには、中国はもちろん、江戸期の日本で出版された版本のコピーを用い、そうした古い本に慣れてもらう。版本を直接手に取る機会も設けたい。
参考書
一般的なものは、授業の初めに紹介するが、受講生の関心によっても多少変わってくるので、積極的に相談してほしい。
履修上の注意
受講生としては、むしろ中国を専門としない者を想定しているので、読解については漢文訓読で行い、中国語の履修は前提としない。ただ、中国語の基礎知識(特に発音)は、あるに越したことはないので、可能であれば学ぶとよいだろう。