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最終更新日:2025年4月21日
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舞台芸術論I
経験の上演3:「影響」の流出史[パノラマ]
日本語で「影響」という訳をあてがわれている「Influence」という言葉は、それとして知覚されず、効果から事後的にのみ見出され、論理/物理的な分節化を拒む作用を一言で片付ける便利な概念として多用されてきました。たとえば人間には感知できない原理による病いの爆発的流行を名指すために(influenza)、あるいはアルコールやドラッグの効果による精神の酩酊状態を形容するために(under the influence)、またはインターネット上の情報発信によって不特定多数の振る舞いを遠隔操作する新種の職業として(influencer)。しかし、学術的な文献にまで蔓延するその中毒的な濫用を自覚している人は少なく、その来歴を知る人はさらに少ないでしょう。その意味で「影響」とはきわめてオカルト的な術語ですが、それは当然のことかもしれません。なぜなら、この言葉の語源をたどるとまず行き着くのはルネサンス期(アーリー・モダン)に復興した古代の占星術と神秘思想/魔術であり、そこでは人間には知覚できない作用関係のことが「流れ出る」という意味のラテン語を用いて「influentia」と呼ばれ、その見えない作用の次元が「隠れている」という意味のラテン語を用いて「occult」と呼ばれていたからです。
この授業では、明確な対象化を拒むことで今日に至るまで強力な影響を及ぼし続けている「影響/influence」という概念の隠れた流出史の発掘作業を行ないます。もっと正確に言えば、ここ2年ほどの発掘作業で分かってきた流れを経過報告的な見取り図として、ある程度太い筆で描かれたパノラマか紙芝居のように、大雑把に提示する予定です。その道のりで、とくに因果論とパフォーマンスの諸問題に注意を払うことによって、歴史の発掘と語りの作業自体に絡みつく影響の力学を舞台の縁に浮かび上がらせることができるといいです。
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