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最終更新日:2024年4月22日

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文化人類学特殊演習b(民族誌映画)

世界を二度と同じ目で見ないために:視点をめぐるラディカルな実践としての民族誌映画
本講義では、「世界を二度と同じ目で見ない」ことを目標とする。

上記の目標を達成するための手段として、本講義は民族誌映画を最も有効なものの一つと位置づける。

民族誌映画は、20世紀半ばから現在まで「人類学の下位分野」と見做され、「論文では伝えきれない非言語的要素を伝える手段」として、あくまで補完的役割を担うものとして主に論じられてきた。いくつかの例外はあるものの、民族誌映画は「世界を変える表現」としては決して概念化されず、学術的枠に押し込められ、また自らをその枠に縛り付けてきた。

本講義では、写真技術の発明の瞬間、すでにそこに宿っていた民族誌映画の種子を探っていく。そして、民族誌映画を「ジャンル」の軛から解き放ち、ある特有の志向を伴う映像実践の一群をゆるやかに繋ぎ合わせる粘着剤として再解釈する。

そう、「民族誌映画」とは、とあるコンセプト、あるいは何らかの精神性に対してその呼び名を与えることで、それらと親和性のある別の何かへの粘着が可能となる装置に過ぎない。人類学者や民族学者が作る映画が民族誌映画なのではなく、アーティストや劇映画作家は民族誌映画を作ることができないわけでもない。民族誌映画は、誰もが粘着することができる一方で、誰も「そのもの」を代表することができない、ただ「世界を二度と同じ目で見ない」ための、ラディカルでオープンな表現領域である。

このように再解釈されたコンセプトを基に、本講義では民族誌映画の実践の基底にある「他性=otherness」をめぐるポリティクスを批判的に紐解きつつ、世界各国でこれまで生み出された民族誌的映画作品を独自の視点で概観していく。また、民族誌映画がもたらす主たる結果である「世界を見る目の変化」すなわち「身体感覚の変容」を、現象学や哲学、現代思想を援用しながら理論化することで、この実践が激動の時代である現代において持ちうる意味を問い直す。

全7回の講義の内、作品鑑賞に2回を充てる予定であり、最終講では民族誌映画を実際に制作するための具体的な行程や越えるべきステップについて、講師自身の制作経験を交えながら論じる。民族誌映画の精神を携えながら映像制作に関わるラディカルな実践者を少しでも育成することができれば、本望である。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
08C102403B
FAS-CA4B23S1
文化人類学特殊演習b(民族誌映画)
太田 光海
S2
集中
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講義使用言語
日本語
単位
1
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教養学部
授業計画
第一回:写真技術の誕生と民族誌的想像力 第二回:作品鑑賞 第三回:「他性」への渇望―民族誌映像を理論化する 第四回:民族誌と実験映画 第五回:作品鑑賞 第六回:日本民族誌映画小史 第七回:この世界の片隅に―民族誌映画を撮る
授業の方法
レクチャーとディスカッションの往復を主体とするが、作品鑑賞や実践経験の伝達などを通し、理論、実践、そして感覚的理解が並立することを目指す。
成績評価方法
科目終了後に提出する4000字の自由レポートの質により評価する。
教科書
特になし。
参考書
今福龍太『野生のテクノロジー』 David MacDougall "The Corporeal Image" Laura Marks "The Skin of the Film" のどれかに目を通しておくと、本講義の感触が掴める。
履修上の注意
秋季修了見込者は修了単位に含まれない。