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最終更新日:2025年4月21日
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文化人類学特殊講義(批判理論としての民俗学)
批判理論としての民俗学
批判理論とは一般的にはフランクフルト学派にルーツを持ち、不平等性を生み出すイデオロギーや権力構造を批判的に分析することで、社会の変革を目指す理論と理解できます。ジェンダー研究やレイシズム研究にも通じる批判理論と、民俗学との繋がりをすぐにイメージすることは困難かも知れません。実際民俗学は、現実政治や社会において周辺的な(重要ではない)事柄を扱っている学問、と見なされているからです。
しかし、この世界に本質的に些末で「周辺」的な存在があるわけではありません。何らかの人・場所・歴史などの存在が、様々な権力関係のなかで「周辺」化されているのではないか、と考えることもできます。アメリカで議論が重ねられてきた「批判理論としての民俗学」、あるいは「批判的民俗学」(Critical Folkloristics)は、マイノリティの文化的実践を主たる研究対象に、「周辺」化を促す権力構造をあぶり出し、「周辺」化された存在の主体性回復を試みる公共民俗学的な色彩を持ってきました。
この授業では、現実社会の課題に様々な形で対応しようとする、日本、アメリカ、ヨーロッパなどの新たな民俗学の潮流を学びます。「批判理論としての民俗学」は、いまだ形の定まっていない未成の研究分野ではありますが、「私たちの日常」をベースに社会的課題に応答しようとする、若い世代の民俗学者によるエスノグラフィーが生産されています。他方で、批判性という観点で日本の民俗学の古典を振りかえると、意外にも社会変革を語った研究を掘り起こすことができます。授業では新旧のエスノグラフィー(民俗誌・民族誌)を読みながら、民俗学の立場から、「別様でもある世界」を探究する視座を得ることを目標とします。
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