第1部 アジア経済の新段階(担当:伊藤亜聖)
概要:第1部はアジア経済に着目する。国境を越えた貿易と投資によってアジアは地域として経済成長を実現してきた。中国の経済大国化やイノベーションとデジタル化の広がりの一方で、高齢化、不平等の拡大も進んでいる。2010年代以降に深まった重要なトレンドと課題を取り上げて検討を加える。
第1回(10月7日)変貌するアジアと世界経済――圧縮された発展、アジア化、中国化
第2回(10月14日)中国はアジアをどう変えたか?――改革開放、国家資本主義、米中対立
第3回(10月21日)「アジアの世紀」を実現できるか?――コンセンサス、革新、生態圏
第4回(10月28日)デジタル化は新興国をどう変えるか?―技術が増幅する可能性と脆弱性
参考図書:
伊藤亜聖(2020)『デジタル化する新興国 先進国を超えるか、監視社会の到来か』中公新書。
遠藤環・伊藤亜聖・大泉啓一郎・後藤健太編著(2018)『現代アジア経済論 -- 「アジアの世紀」を学ぶ』有斐閣。(Goto, Kenta, Tamaki Endo, Asei Ito ed. (2020) The Asian Economy: Contemporary Issues and Challenges, Routledge)
杉原薫(2020) 『世界史のなかの東アジアの奇跡』名古屋大学出版会。
高木佑輔・伊藤亜聖(2024)『新興アジアの政治と経済』放送大学教育振興会。
第2部 今日の世界的課題と中国の挑戦(担当:丸川知雄)
概要:1980年代から最近まで、中国は自他ともに認める「後進国」であり、先進国の技術や経験の吸収に努めてきた。一方、日本はこの間「先進国」で、技術や経験を伝える側であった。だが、中国が高所得国入り間近にまで来ている今日、中国の経験や技術が参考になる側面が多くなってきた。例えば、日本でにわかに政策課題となった「経済安全保障」に中国は長く取り組んできた。超高齢社会の日本は「課題先進国」であるが、中国はその面でも急速にキャッチアップしている。グローバル商品であった半導体を政府の補助金を使って国産化する動きは中国が先鞭をつけ、欧米と日本が後を追っている。そして、自動車における”CASE"(ネット接続、自動運転、シェア、EV化)では中国が世界の先頭を走っている。本シリーズではこの4テーマを取り上げて日本など他国へのインプリケーションを考える。
第5回(11月4日) 「経済安全保障」を考えるーー中国の痛い経験
第6回(11月11日) 中国の速すぎる人口転換ーー「人口爆発」から少子高齢化へ
第7回(11月13日) 中国の半導体国産化戦略
第8回(12月2日) 中国が世界の先端を切り開くEVと自動運転
(参考文献)
丸川知雄『現代中国経済・新版』有斐閣、2021年
第3部 東南アジアの経済発展(担当:大泉啓一郎)
概要:第3部は東南アジアに着目する。東南アジアは多様な地域であるが、ASEAN(東南アジア諸国連合)発足以降、地域的な政治・経済・社会統合を目指してきた。
その過程でアジアの経済統合を牽引する存在になり、2015年にはASEAN共同体を実現した。
東南アジアの地域的特徴、ASEANの機能、そして経済発展の変遷と展望を日本と中国との関係から検討する。
第9回(12月9日)東南アジアの地域的特徴 多様性に富んだ地域
地形・気候・歴史から東南アジアの地域的な特徴を学習する
第10回(12月16日)ASEANとしての経済発展 地域協力組織から地域共同体へ
ASEANの発足の背景から経済連携協定、共同体発足までの変遷を理解する
第11回(12月23日)日本とASEAN 支援から経済連携へ
日本と東南アジアとの歴史を経済発展を中心に振り返る
第12回(1月6日)中国とASEAN 東アジアの持続的経済成長の担い手になるか
21世紀以降の中国との経済関係から東南アジアの未来を考える
参考図書・資料:
遠藤環・伊藤亜聖・大泉啓一郎・後藤健太編著(2018)『現代アジア経済論 -- 「アジアの世紀」を学ぶ』有斐閣ブックス
加納啓良(2012)『東大講義 東南アジア近現代史』めこん
経済産業省『通商白書』各年度版
日本アセアンセンター『ASEAN情報マップ』https://www.asean.or.jp/*****