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最終更新日:2024年10月18日

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開発経済Ⅰ

開発経済 Development Economics
授業の概要:

1946年東京の1人当たりカロリー摂取量はわずかに1352kカロリーであったという記録があります。ほんの70年前の日本は、世界において最も貧しい国の一つであったわけです。その後,日本やアジアの国々は現在の低所得発展途上国と同様に、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)などの融資を受けながら急速な発展を遂げました。我々が果たし得る重要な役割は、日本そしてアジア諸国の経済発展・貧困削減の経験を体系化し・生かしてゆくことでしょう。

「開発経済I」講義は、発展途上国の経済を実証的・政策的・実践的に論ずる経済学の一分野、「開発経済学」の入門講義です。開発経済学と一言で表わしても、その内容はある低所得国の経済成長や開発援助・国際的な資金移動を議論するマクロ経済学的な分析から、とある村落に居住する特定の農民の生活を分析する非常にミクロ的な議論まで多種多様です。経済学の立場から言えば、マクロ経済学・ミクロ経済学を基本として国際金融論・国際貿易論・農業経済学・ゲームの理論・リスクと情報の議論・産業組織論・都市経済学等すべての分野の理論的成果を踏まえているといっても過言ではありません。さらには、理論的な帰結を検証するための標本調査・データ収集(フィールドワーク)・そのデータを用いた計量経済学的分析が集約的に行われてきた分野でもあり、計量経済学は不可欠です。

最近では、開発政策の効果を正確に計測するための無作為化比較試験 (RCT)手法を用いた政策評価が盛んとなっており、政策と研究が有機的に統合するという「開発経済学の革命」が起こっています。2019年のノーベル経済学賞は、この「開発経済学の革命」の立役者であるアビジット・バネルジー教授、エスター・デュフロ教授、マイケル・クレマー教授に授与されました。また、グラミン銀行とムハマド・ユヌス教授がノーベル平和賞を受賞して一躍有名になったマイクロファイナンスのメカニズムなどに注目し、その参加者を主な対象とした経済実験、「フィールド実験」も近年、活発に行われており、実験経済学の一つの核になっています。さらに、コロナ禍において、衛星画像・携帯電話の基地局通信履歴 (CDR)や行政・民間企業業務データなどいわゆる「ビッグデータ」を用いた研究や政策設計も盛んになってきました。つまり、開発経済学を学習するためには経済学のすべての分野をある程度理解する必要があるということになります。「経済発展のための処方性を提供する」という現実の極めて政策的な要請にもかかわらず、開発経済学の学習はそもそも非常に困難であり、多大な努力を必要とするといえるかもしれません。

本講義では、特にアジア太平洋地域を中心の対象としつつ、開発経済学の標準的トピック・先端的トピックを段階的に扱うことによって、この様な実践的な分野に足を踏み入れる手助けとなる講義を目指しています。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
0702209-01
FEC-EC4205L1
開発経済Ⅰ
澤田 康幸
S1
火曜2限、金曜2限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
経済学部
授業計画
講義内容(予定): 第1週~第2週 1.長期の発展と成長の経済学 1.1 開発経済学超入門(ADB 1) *数字は、章番号を示す(以下同様) 1.2 経済発展をどうとらえるか(澤田15-1; ADB 2) 1.3 新古典派経済成長論: 理論と実証(JV 1-3; BD19 5) 1.4 内生的経済成長論(JV 9; ADB 5; BD19 5) 1.5 貿易・投資と経済成長(講義資料; ADB 9; BD19 3) 第3週~第4週 2.経済成長を超えて 2.1 産業構造変化(ADB 3; 講義資料; BD19 2) 2.2 空間の中での経済発展:「新しい経済地理学」入門(澤田第5章; ADB 3; BD19 3) 2.3 計量経済学的政策評価入門(講義資料・KA 2) 2.4 貧困と不平等 (ADB 11; BD 1 and 2; BD19 7, 9) 2.5 人的資本1: 健康 (講義資料; ADB 6; BD 3; KA 10) 2.6 人的資本2: 教育 (講義資料; ADB 6; BD 4; KA 9) 2.7 気候変動と環境問題(講義資料; ADB 13; BD19 6) 第5週~第6週 3.経済発展におけるリスクの問題 3.1 リスクと災害(講義ノート) 3.2 貧困動態: モデルと実証 (講義ノート; ADB 11) 3.3 公式・非公式の保険メカニズム (BD 6 and KA 3; 講義ノート) 3.4 経常収支の決定と経済危機(澤田第7・8・11・16章; ADB 10) 4.開発政策の実践 4.1 マイクロファイナンス入門(BD 7; KA 5 and 6; 講義スライド) 4.2 フィールド実験入門 (KA 6・講義スライド; BD19 4) 4.3 政府開発援助(ODA)(講義ノート; ADB 14) おさらい&試験対策
授業の方法
講義形式
成績評価方法
抜き打ちテストと定期試験(予定)
教科書
特定の教科書は用いないが、講義スライドをすべて公開する
参考書
教科書: 特定の教科書は用いないが、以下の書籍を「参考書」とする。 (澤田) 澤田康幸『基礎コース 国際経済学』新世社, 2003年(講義ノートを併用) (戸堂)戸堂康之『開発経済学入門(第二版)』新世社, 2021年 (山形)山形辰史『入門 開発経済学-グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション』中公新書, 2023年 (ADB) Asian Development Bank (2020). Asia's Journey to Prosperity: Policy, Market, and Technology over 50 Years https://www.adb.org/*****(澤田康幸監訳『アジア開発史』勁草書房, 2021年)、補章「アジアにおける災害レジリエンス」はこちらhttps://www.keisoshobo.co.jp/***** (JV) Charles I. Jones and Dietrich Vollrath (2013), Introduction to Economic Growth, Third Edition, Norton.(第1版は和訳有り:香西訳『経済成長理論』) (BD) Banerjee, Ahbijit and Esther Duflo (2011) Poor Economics, Public Affairs (『貧乏人の経済学』山形訳・みすず書房) (KA) Dean Karlan and Jacob Appel (2011), More than Good Intentions: How a New Economic is Helping to Solve Global Poverty, Dutton (『善意で貧困はなくせるのか』みすず書房). (BD19) Banerjee, Ahbijit and Esther Duflo (2019) Good Economics for Hard Times (『絶望を希望に変える経済学』村井訳・日本経済新聞出版)
履修上の注意
履修要件:初級のミクロ経済学・初級のマクロ経済学・初級の計量経済学ないしは統計学の知識を前提とする。