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最終更新日:2026年10月16日
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フランス語学フランス文学特殊講義I
エルヴェ・ル・テリエ『異常(アノマリー)』を読む
エルヴェ・ル・テリエ『異常(アノマリー)』(2020)は、実験的な小説でありながらゴンクール賞を受賞し、デュラス『愛人』(1984)に次ぐ売上を記録した作品である。しかし、こうした大衆性は必ずしも深みの欠如を意味するものではない。哲学者ジャン=ピエール・デュピュイは次のように述べている。「私はエルヴェ・ル・テリエのこの小説を二度読んだ――その微妙さを捉えるには最低でもそれくらい必要だからだ――そして毎回、筋立ての力に引き込まれながらも、どこか居心地の悪さを覚えた」。物語は、2021年3月10日、パリ=ニューヨーク便に搭乗した約十人の乗客たちを追うところから始まる。この便は、機体を破壊しかねないほどの気象現象に見舞われ、もし墜落していれば数百人の乗客が命を落としていたであろう。
【以下、重要なネタバレがあります。授業においてはネタバレを気にしませんので、楽しみを奪われたくない人は受講前に小説を一通り読んでおいてください】
ところが三か月後、まったく同じ便・同じ乗客を乗せた飛行機が再び到着し、登場人物たちはそれぞれ「自分の分身」と対峙することになる。本作の独創性は、過去や未来だけでなく人物そのものが二重化され、人生の異なる二つの時点が直接に向き合う点にある。物語は、分身の出現という一つの状況から、対立、回避、和解、破滅、一致といった多様な反応を描き分ける。各章はノワール、恋愛喜劇、心理小説、社会ドキュメンタリーなど異なるジャンルを体現し、メールや日記といった形式も駆使される。登場人物たちは、分身との出会いが生みうるあらゆる潜在的なケースを網羅するよう設計されており、この小説は一つの思考実験として、「自分が自分に出会う」とは何かを多面的に探究している。今回の授業では、物語性と実験性が高度に結びついたこの小説を読み解きながら、人生における「選択肢」や「ありえたはずの人生」(条件法過去による人生)について考えてみたい。
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