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最終更新日:2026年10月16日
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国文学概論
大正日本の想像力とその展開
日本の近代文学のうち、大正期(1912~1926)は独特の特徴ある時代と言える。それは社会的には、日露戦争後の産業・経済発展を背景に本格的な「市民社会」が成立した時代であり、また第一次世界大戦後のヴェルサイユ体制という世界秩序の中で「五大国」に数えられ、不平等条約からようやく解放された一等国の自信のもとに、アジア諸地域で熾烈な支配権競争へと身を投じて軋轢を生む時代でもある。
この間の文学事情としては、出版産業の拡大により「職業作家」が続々誕生した点に特徴があり、これらの作家たちは商業誌のノルマから、1回読み切りの作品を多作することで「短篇小説」の黄金時代を築いた。また、西洋を手本に「リアリズム」を推進する形で近代化が図られてきた明治以来の小説の手法にも、大きな変化が生じる。すなわち、「心理」(動機)と「行動」(結果)の整合化に腐心してきた従来の小説作法が変容し、「存在」に深く沈潜する思索的で内向的な内容が好まれるようになる。この変化は、存在の根底をなす「無意識」の探求に目を向けた幻想文学や、日本独特の芸術ジャンルというナショナルな発想の下に大流行する「私小説」(心境小説)という形をとって、大正文学の性格を作り上げていった。もっとも、ロシア革命に刺激された社会運動の動向が、昭和文学への橋渡しになったことも見逃せない。
この講義では、最初に明治から昭和に至る文学史のイメージをつかみ、佐藤春夫を軸として、大正期の想像力の展開を時代状況との関連から論じていく。ほかにも、志賀直哉、芥川龍之介、梶井基次郎などを例に、大正中期から後期に発表された小説を取り上げ、基本的な語りの構造分析の方法や、文学テクストを交通機関や都市空間から読み解く文化研究的な方法など、文学を「解釈」するための技術についても紹介する。
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